6: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:21:41.74 ID:Vy4ghrqIO
ありがとうと言って軽く微笑むと彼女も可愛い笑顔を見せて再び自分の業務に戻っていった。
「はい…なんでしょう?」
受話器の向こうからは聞き慣れた声が聞こえた。少し嗄れた声の持ち主は僕の父親だった。
7: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:22:37.08 ID:Vy4ghrqIO
「ったく…世の中はクリスマスだってのに残業とは……」
「部長!!」
ぶつぶつと独り言を言う上司に向かって僕は半ば怒鳴りつける様に言った。
8: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:23:26.39 ID:Vy4ghrqIO
「もしかして…ついにか!!」
上司は何かを察した様に鋭い眼差しを僕にぶつけた。
「はい!!今すぐ行かないと…」
9: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:24:09.21 ID:Vy4ghrqIO
激しい運動に慣れていないせいか、肺が激しく痛み動悸が僕を襲った。
しかし目的地まであと少しだ、立ち止まる訳にはいかなかった。
「おい痛えな!!」
10: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:25:01.14 ID:Vy4ghrqIO
「ゲホッ…ゲホゲホ……」
やっと辿り着いた。その建物、市立病院の前で僕はようやく足を止めた。
乱れた呼吸を落ち着かせる為にすぅーっと深呼吸をする。
11: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:25:53.87 ID:Vy4ghrqIO
病院の中は灯りこそ付いているものの人の姿はほとんど無く、受付のナースとごくわずかな患者のみだった。
「あの…301号室の……」
受付でなにやら真剣に資料を見つめているナースに声をかける。
12: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:26:40.96 ID:Vy4ghrqIO
階段を登る音が響き渡る。コツンコツンと一歩一歩登っていく。
心臓が高鳴る。ついに待ち望んでいたものと対面出来るのだ。
「……」
13: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:27:47.74 ID:Vy4ghrqIO
部屋の窓からは眩い街の灯りが見えた。
その手前には大きなベッドとその隣に小さなベッド。大きなベッドには僕の愛おしい人がいた。
「来てくれてありがとうね」
14: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:28:54.95 ID:Vy4ghrqIO
そこには注意しないと聞き取れない程の小さな寝息を立てて眠っているとても小さな赤ん坊がいた。
彼女は赤ん坊の頭を優しく撫でると僕を手招いた。
「ほら、早く来て」
15: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:30:04.28 ID:Vy4ghrqIO
「かわいいなぁ…。この子が僕たちの……」
「そうよ。私たちの赤ちゃん」
私たちの赤ちゃん。つまり……
16: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:30:54.49 ID:Vy4ghrqIO
「愛してる」
僕たちは見つめ合う。
彼女の瞳も潤んでいて、そしてそこから綺麗な雫が線を描いて頬を滑り落ちた。
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