12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:10:12.48 ID:ciVG5wjy0
腕時計を見ればもう十時だ。
特に何も言ってはこないが、ちひろさんも待ちくたびれているに違いない。
あとは確認すべき部屋もほぼないので、急いで済ませて戻るべく、数部屋を見回り廊下を進み――
「次で最後……屋上か。滅多に人が入ることも無いところだが一応は見ておかないと…… ――ん?」
――階段に差し掛かったところでわずかな違和感を感じた。
足下を撫でるように、ひやりとした風が流れ降りてくる。紛れもなく屋上からだ。
さっき上がってきた時はこうでは無かった……つまり、私が瞳子さんと話している間に、誰かが屋上に入ったことになる。
『――――〜? ――――……!』
「……女の子の声か。 だがこれは……なんだ? 日本語ではないな……」
不審者などの可能性を鑑み、ちひろさんを呼びに戻ろうか様子を見るかと決めかねていると、話し声が断続的に聞こえてきた。
しかもそれはどうやら外国語で……あまり耳慣れない言語だ。
口調はのんびりしているものの、今は口論でもしているのかしょげたり荒ぶったりと忙しい。
「誰か外国人のアイドルが電話でもしているのか…… やれやれ、どうしたものかな」
女性の不審者という可能性も無いではないが、私の頭には他の懸念が浮かんでいた。
こんな時間に、こんな場所でアイドルが電話をしていたなら、それは明らかに不自然だ。
こう言ってはなんだが、アイドルとしての後ろ暗い怪しさを感じるというわけだ。
無論そうでないに越したことはないが、いずれにせよ何が起きているのかはっきりさせたほうが、もっと越したことが起こらない。
「ここで軽口を叩いている場合ではないな…… ええい、ままよ」
何が起こっているとしても、放っておくという選択肢は私の中には無かった。
つくづくおせっかい焼きなことだ自分でも思うが――それで止まれるような私ではない。
やれる事があるなら、やらずにはいられない。それが私の性分だった。
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