過去ログ - 木場真奈美「木場サンタ?」
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13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:17:26.94 ID:ciVG5wjy0
音を立てないよう慎重に階段を上って踊り場を折り返すと、予想通り開け放たれた両開きの大扉。さらにちらちら舞う雪が目に入った。
なおも上っていくと、次第に屋上の全容が明らかになり……私はひとまず安堵の息をつくことができた。
誰にも踏まれていないまっさらな雪の絨毯に、一人分の足跡と…… なにやら予想外のひづめのような跡。
足跡の主はこちらに背を向け、携帯電話を持ったその手を気合いの抜けた様子で垂れ下げていた。

以下略



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:20:22.18 ID:ciVG5wjy0
「いてて…… どうしたイヴ、本当に何があった?」
「ごめんなさい〜!でも私、もうどうしたらいいか〜!」

全身に浴びた雪も気にせず、倒れ込んだまま私の胸元にぐりぐりと頭を押しつけ泣きわめくイヴ。
私の方も背中を打ったり薄着で雪まみれになったりと結構な惨状ではあったが、彼女の様子と比べれば自分のことなど心配している場合ではない。
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15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:22:27.32 ID:ciVG5wjy0
まさか瞳子さんもこの展開を見越してサンタ云々を言ったわけではないだろうが……いやはや。

「起こるものだな、偶然というのも……」
「? 今、何か〜?」
「いや、何でもないよ」
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16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:23:54.95 ID:ciVG5wjy0
「しかし、驚いたな。毎年これだけの仕事を真夜中にこなしていたのか?」

聞けば聞くほどサンタの仕事量は凄まじく、素直に感心した。
しかしイヴのほうは話すにも妙に覇気がなく、私の言葉の端々に何か思うことでもあるのか、時折困ったような苦笑を浮かべていた。
そんな中、特に言葉に詰まり、むむむと考え込むように話し出すイヴ。
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17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:25:24.48 ID:ciVG5wjy0
「プレゼントを盗まれて、プロデューサー君に拾われて、アイドルをやりながらプレゼントを用意していた、と。聞けば聞くほど凄まじいな……」
「これでもすっごく持ち直したんですよ〜?」
「いや、何というか…… まぁ、あんまり辛いことがあるなら、頼ってくれていいからな? 私に出来ることなら手伝うから」

話を聞くにつれ、今まで聞いたこともなかったイヴの悲惨な境遇が怒濤の勢いで明らかになっていくのだが、なにぶん本人がぽわぽわとした口調で何の気なしに語るものだから、激しく反応に困る。
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18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:27:15.94 ID:ciVG5wjy0
「これ以外にも、まだたくさんプレゼントはあるんですよ〜。でも、必要な分にはぜんぜん足りないっていう、そういうことなんです〜」
「しかし、去年はまったく配りに行けなかったんだろう? 君の言うとおり大きく持ち直しているし、配れる分だけでも配ればいいじゃないか」

こう率直に言うのも何だが、イヴは相当に売れている。
未成年という事もあり、今のような深夜は仕事がないのかもしれないが……
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19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:29:03.37 ID:ciVG5wjy0
「もちろん、今あるぶんだけでも、お仕事させてほしいって言いました! けど……」

高ぶる思いを叫ぶように口にし、また辛そうに俯く。
嗚咽を漏らしかねない様子でなお言葉を紡ごうとするのがいたたまれなくなって、また私はイヴを抱きしめた。

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20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:32:53.86 ID:ciVG5wjy0
「そのままの意味だよ。ただ、行くか帰るかと聞いたんだ」
「私、行くといっても……」
「もう、どこも行くところがないってことはないだろう?」

きょとんとするイヴの言葉を遮って私は続ける。
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21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:34:36.61 ID:ciVG5wjy0
「アイドルもサンタも同じだ。悩んで自ら夢をすり減らしているうちは、人に夢を配る仕事なんてできっこない」
「……!」
「だから、こうして私に出来る形で、君が進める道を照らして示させてもらった。しがない一アイドルからのクリスマスプレゼントだ」

言いたいことを全て吐き出し、私は出口に向かった。イヴの表情が何を表しているのかはわからないが、もう私に出来ることはない。
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22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:36:17.19 ID:ciVG5wjy0
私の腰に巻きついたまま、イヴが言う。

「あ、そうです!さっき『困ったことがあったら頼っていい』って言ってくれましたよね〜?」
「あぁ、いつでも言ってくれて構わない」
「いま、一つだけお手伝いしてもらいたいんです〜!お願いしてもいいですか〜?」
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23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:39:07.88 ID:ciVG5wjy0
ガタンガタンと、音はなおも近く、大きくなって、イヴもざくざくと雪を踏みしめながら屋上へと舞い戻ってきた。
そして私の手を取り、屋上の真ん中まで引っ張ってくると、おもむろに言う。

「私が合図をしたら、いっせ〜のせ、でソリに飛び乗ってください〜! 木場サンタさん、今日はよろしくお願いします〜!」
「……おい、ちょっと待て。これが君の言う『手伝って欲しいこと』か? なぁ、言いたいことは山ほどあるがまずはこの手を離してくれないか、おい、ちょっと」
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