過去ログ - キョン「それでもコイツは涼宮ハルヒなんだ」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 11:58:19.48 ID:Icdf4Wax0
 最近、うちの妹は天気予報のお姉さんにテレビ画面越しに話しかけている。内容は一つ覚えの繰り返しで、つまり、いつになったら雪が降るのか教えて下さい、と要約したら非常に微笑ましい内容なのではあるが、さりとて兄としては何をしてやる事も出来ん。

 大人しく待っていれば後一月もすれば降るんじゃないか、って希望的な観測をリップサービスしてやれるくらいだ。

 まあ? 初雪に関して一つだけでは有るが心当たりは無くもない。こんなことを言ってしまえる自分がそら恐ろしくも有り、またうら悲しい。いつから高校生は気象を操る術まで手が届くようになってしまったのか。驚天動地だ。空前絶後だ。

 ああ、ここは笑うところで間違いないぞ。

 とは言っても。まさか初雪にはしゃぐ妹見たさに後数百年の生態系に傷跡を残すほど馬鹿でも甘やかしでも俺はない。代わりって訳じゃないが家を出る前にてるてる坊主の逆さ磔刑における様式を妹には伝授しておいた。今頃、リビングは串刺公ヴラド三世がスタンディングオベーションで拍手を打ち鳴らすような地獄絵図と化しているであろう。

 さて、少女が雪に夢見る寒い日に街中を男と二人で歩きながら思うのは世界の果て、地球儀をぐるり半周させた真裏の島国でもってすらその名が知れ渡っている赤服爺さんってのはそりゃ一体どんな気分なんだろうね、ってな事だ。

 人はこんな思考を往々にして現実逃避と呼ぶらしいが俺はまさに今、その真っ最中だった。ああ、自分で分かっているとも。だから、ほっといてくれ。

 目にも心にも毒極まりない赤と緑のコーディネイト。どいつもこいつも柊や鈴で飾り付けて、日ごろ声高に叫んでる個性とやらはどこへ行っちまったんだ? すっかり埋没しやがって。

「ああ、商店街はもうすっかりクリスマス一色ですね」

 隣の優男が二酸化炭素とも霊魂とも判別付かぬ白い気体を吐き出しながら見たままズバリを言葉にする。ええい、超能力者よ、もう少し捻った事は言えないのか。

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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 12:07:50.32 ID:Icdf4Wax0
「なあ、古泉よ」

「なんでしょうか?」

「絶望的な彼我戦力差を俺に再確認させる以外の台詞はお前の口からは出てこないのか?」
以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 12:15:30.81 ID:Icdf4Wax0
「塩を青菜か傷口かは知らんが、その類に擦り込む結果にしかならないと十分に予測され得る未来を回避する為に精一杯尽力しようぜ、お互い。
と、こう言っているようには聞こえなかったか?」

「今日の貴方は要領を得ませんね。いえ、失礼。僕の読解力が足りてないだけでしょう」

以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 12:27:02.61 ID:Icdf4Wax0
 願うのなんざ一つしかない。すなわち、この天下万民の財布の紐を緩ませんと企てる国家規模のイベントが粛々と俺の頭上を過ぎ去ってくれることだ。

 彼女が欲しい云々は願い事の余裕が有ったら改めてそこに捻じ込むとしよう。何事も先ずは安定から始まるものだしな。

 基盤が無ければ恋愛なんて成り立たんとはよく聞く話さ。古今の悲恋を持ち出すまでも無い。世間に負けたんじゃなくて、計画性の無さによる自滅ってな。
以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2012/12/31(月) 12:29:17.95 ID:WygG86K6o
ほむ


6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 12:36:50.55 ID:Icdf4Wax0
 ああ、未来は白紙だと信じていた頃の俺よ、さらば。そしてウェルカム、魔法のスケジュール帳。

 持ち主の意思になど構う事無く予定が自動かつ強制で書き込まれていく優れもの……もとい、困りものだ。

「ご心配なさらずとも」
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 12:45:30.23 ID:Icdf4Wax0
 子供と殴り合う深夜徘徊老人、拳で語り合って友情が目覚めた挙句のプレゼント贈呈とかアイツの頭の中はどうなっていやがるのか。一度脳外科に行ってCTスキャンを取ってくるべきだと俺は割と本気で心配だ。

「……アイツはアホだからな」

 やれやれと一つ溜息を吐く。隣を歩く少年はただ笑っていた。――だ、か、ら、笑い事じゃないんだよ、古泉? その辺、本当に分かってんのか?
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 12:54:31.02 ID:Icdf4Wax0
「すう……すう……」

 今年も残すところ後わずかとなった十二月半ば、授業は二学期間にせめてここまではやっておかなければならないという(生徒に無断で)各教員が自らに課した目標へとラストスパートを駆け、
急加速に振り落とされんようにせめてノートだけでもと考える俺は窓際という極寒のシベリア流刑にあってすら怠惰を許されてはいなかった。

以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 13:05:30.21 ID:Icdf4Wax0
「ん……んんぅ……くう……すう……」

 でもって、そんな危機感を抱き始めているのはどうやら俺ばかりでも無いらしい。雰囲気なんて言葉で誤魔化すのも躊躇われる程度には、気付けばクラスメイト達の眼の色も徐々にだが本気の色へとグラデーションを始めている。

 そういうのが徐々に俺を急かし、焦らせ、そしてそんな急いて焦った俺の影響で誰かも急かされるって負のスパイラルがクラス全体に根を張っているのが眼に見えるようだ。
以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 13:13:56.72 ID:Icdf4Wax0
 豪胆という言葉がそのまま人となったようだとは古泉の評価で、対して傲慢の間違いだろと、こっちは俺の評価。ま、どっちでもいいが。

 にしてもよく寝てやがる。ああ、呪いたくなるほどの爆睡ぶりじゃねえの。ったく。比喩じゃなく命に関わりかねない低温だってのによく眠れるよ、コイツ。首だけで振り返って様子を伺って……、

 ……あれ?
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 13:22:36.43 ID:Icdf4Wax0
 俺は咄嗟に時計を見る。幸いにも残り十分足らずを耐え切れば放課後だ。そうなれば朝比奈さんのあつーいお茶も、部室には電気屋から接収した電気ストーブだって有る。蘇生にはこれ以上なく十分な組み合わせだ。

 ならば、それまでにこれ以上ハルヒの体温を下げない事が目下、俺に与えられた急務。世話を焼かせやがる団長様だ、全く。

 別に授業を真面目に受けろと言う気は無いが、(どの口が言うのかと詰られるのは眼に見えているしな)それにしたって自分の命くらいしっかり守って欲しい。
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 13:31:17.12 ID:Icdf4Wax0
 特に冷えていた指先から肩口の辺り、机に放り出している部分へとそれを掛けてやるとハルヒはまるで待っていたかのように頭から布の中へと逃げ込んだ。

「……どんだけ寒かったんだよ、お前」

 眠り続ける少女に向けてそうボヤき、そしてまた仕方が無いかとも思った。
以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2012/12/31(月) 13:32:20.15 ID:H2Q0s5tyo
ハルヒ阿呆可愛くてわろた


14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 13:40:27.25 ID:Icdf4Wax0
 授業が終わり、ホームルームで担任が口にしたのは三年生に気を使うように。受験でピリピリしてる時期だってのはよく分かる。

 だが、気を使うも何も俺が接する数少ない上級生であらせられる所の朝比奈さんと言えば年が明けてもこっちに居るかどうかすら俺には分からないしな。

 なにせ、彼女はリアル時を駆ける少女だ。卒業と同時に未来に帰っちまう可能性を古泉から聞いていた。実際のところは分からない。聞いてみる勇気も持ってないし。
以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 13:52:39.99 ID:Icdf4Wax0
「は? ……いきなり何言ってんだ、キョン?」

「女なんて星の数ほど居るさ、と言ったんだが」

 失恋したヤツへ送られる常套句だと、二回言ってようやく谷口は理解したようだった。反応遅いぞ。
以下略



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 14:02:35.20 ID:Icdf4Wax0
「ぐっ……なんとでも言えよ。だけどな、彼女はおろかデートの約束すらないキョンに俺の壁は越えられねえ!」

 谷口は両腕でもって空中に大きな四角を描いた。

「名付けて、谷口スペシャル!」
以下略



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 14:14:09.34 ID:Icdf4Wax0
「くそっ、国木田まで一緒になって馬鹿にしやがって。あのなあ、言っておくが俺はもう去年までの俺じゃねえんだよ」

 ほう、それは初耳だ。いつの間に「マークツー」もしくは「改」、「バージョン1,10」のような修飾が付いていたのか。

 男子三日会わざれば刮目して見よ。眼を凝らしても違いなんてのは制服が一年分くたびれただとか、学年章の横線が一本増えただとか、それくらいしか分からんのだが。
以下略



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/31(月) 14:26:18.63 ID:NaiVhsyPo
みてる


19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 14:30:36.88 ID:Icdf4Wax0
 はあ、溜息しか出て来ない。この話題は早々に打ち切ってしまうべきか。馬鹿は死ななきゃ治らんし、馬鹿は馬鹿なりに青春を謳歌する術は心得ているらしい。

 だったら俺に何が出来ようか。精々、友の恋路に対して呪詛を撒き散らしてやるのが関の山だ。

「それで、谷口? わざわざ俺の机まで来てお前は一体何の用なんだ?」
以下略



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/31(月) 14:33:09.03 ID:1HOgk+Sr0
見ています。
是非完走なさってください。



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 14:40:11.84 ID:Icdf4Wax0
「いや、奥村の授業中コイツ凍死しかけてたから、救命活動をだな……」

「それで寒そうな涼宮さんに自分のコートを掛けてあげたとでも言うのかい、キョン?」

 言う……のだが、なぜだろう。こうして第三者視点で俺のやった事を改めて聞かされると、その行為はまるで……。
以下略



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