167:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 23:28:08.63 ID:L62z0KCK0
良く見ると、あかりちゃんはなんだか恥ずかしそうで、京子先輩もどこかぎこちなく動いてる。
あかり「え、えっと結衣ちゃん、ちなつちゃん……」
ちなつ「その話は後日ってことで、今日は帰ってちゃんと休んだ方がいいよ。風邪引いちゃうよ」
あかり「うん、ありがと」
168:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 23:29:03.92 ID:L62z0KCK0
―結衣―
二人が公園から立ち去って、私はちなつちゃんを自宅に招いていた。理由としては、一日で色々と動かし過ぎたちなつちゃんに言う事とがあったからだ。
結衣「いくらなんでもデートの次の日に、ここまで動かすことは無かったんじゃないかな」
169:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 23:30:14.58 ID:L62z0KCK0
炬燵の中、どこか彷徨っているちなつちゃんの手を優しく握る。触れてみてわかったけど、その手は震えていた。なんで、震えているのかって考えたけど、ちなつちゃんが何を我慢してたのか、少しだけ察しがついて。
結衣「ちなつちゃん、頑張ってくれてありがとう」
ちなつ「……卑怯です」
170:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 23:32:34.10 ID:L62z0KCK0
今さっきまで二人の前に立ってたちなつちゃんとは思えないくらいに、その体は震えてた。ああ、こんな小さい体でごらく部の問題に立ち向かってたんだって思った。私も、ちなつちゃんの枷になっていたことくらい理解できる。
ちなつ「みんなから、嫌われちゃうんじゃないかって。うまくいかなかったらって、うまくいっても私だけ仲間外れにされちゃうんじゃないかって。考えると、そんなことばっかりが頭に溢れちゃって、逃げ出したかった」
結衣「うん」
171:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 23:33:25.89 ID:L62z0KCK0
ちなつ「私、みんなの為に動いてた。でもそれが全部おせっかいで、全部がめちゃくちゃになっちゃうんじゃないかって、あかりちゃんも京子先輩も、結衣先輩も、みんなバラバラになっちゃうんじゃないかって、不安だった」
結衣「うん」
ここまで友達の事を思えるのが、ちなつちゃんのいいところなんだって思えた。
だって、本当に人の事を考えられなくちゃ、こんな風にはなれない。
172:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 23:34:17.90 ID:L62z0KCK0
ちなつ「それが現実に起っちゃうじゃないかって、私の所為でそれが本当に起きちゃったらって、考えたくないけど考えちゃって、友達がいなくなっちゃうのがすごく怖かった」
結衣「うん」
でも、ちなつちゃんは進んだ。
全部、背負ってもいいからって進んだ。
173:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 23:35:07.79 ID:L62z0KCK0
結衣「ちなつちゃん、もう大丈夫だよ。もう大丈夫」
ちなつ「結衣先輩……」
結衣「ちなつちゃんがいなかったら、私たちは今年で終わってたはずだから。今まで一緒に過ごしてきたこととか全部、ごらく部も全部無くなってたはずだから、だからちなつちゃんには感謝しきれないくらいだよ」
本当に、このごらく部にちなつちゃんが入部してくれなかったら、ここで私は一人、終わっていく私たちの関係を悔やんでいるだけだったはず。
174:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 23:36:16.83 ID:L62z0KCK0
ちなつ「結衣先輩、ありがとう」
結衣「どういたしまして」
ちなつ「やっぱり、結衣先輩の事、好きみたいです」
その言葉に、少しだけ私は頭を掻いて、気づけばちなつちゃんは離れていた。
175:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 23:38:23.75 ID:L62z0KCK0
―京子―
あかり「雪、結構降ってきたね」
京子「そうだな〜、これなら雪合戦とかもできるんじゃないか?」
176:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 23:39:23.98 ID:L62z0KCK0
あかり「京子ちゃんとね、また一緒に歩けるようになれて、嬉しいんだよ」
京子「わ、私もあかりとこうして一緒に歩けるようになれて嬉しいよ」
二人でこうして歩いていけるようになったのは、皆のおかげだってわかってる。
もしも、綾乃が私を受け入れてたら、ちなつちゃんがいなかったら、結衣が家に来てくれなかったら、多分もう全部が終わってた。
177:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 23:40:33.42 ID:L62z0KCK0
やがて見えてくるのはあかりの家で、今日一日の事、あかりは親になんて説明するんだろうなって思いながら、結果はやっぱり残さなくちゃいけないんだよね、なんて思った。
妙に決心ができている私に、心臓の鼓動が急ぎたてるように速いリズムを刻む。
あと少しであかりの家の前になる。
あかりの方を見やると、なんだか緊張してる私を見て心配そうな顔をしてた。
大丈夫と聞かれて、ダイジョウブデースなんて答えを出してしまうくらいに、口があまり回らない。
178:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 23:43:30.49 ID:L62z0KCK0
いつか叶えればいい、それはとても都合の良い言葉だと思う。
何時でもいいのだから。
でもそれは、手元にそれがない人だけが使っていい言葉で、今の私には全てが揃ってた。
あかりの頼みごとを叶えること、それを実現すること、それは今の私にしかできないことだって、なぜかそのときだけは思えて。
179:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 23:44:12.70 ID:L62z0KCK0
あかり「なに、京子ちゃ――」
一気にあかりの肩を引きよせる。手に持っていた赤い傘がその場に落ちると、雪がほてった頬に触れるようになる。
驚いているあかりの事なんて気にしないで、そのまま思いっきり抱き寄せるように私も一歩出て、一気にあかりの瞳に近づく。
あかりの目が静かに閉じて、私も瞳を閉じる。
180:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 23:45:19.72 ID:L62z0KCK0
少しだけカサカサした感触があった。
こんな寒空、リップクリームも付けないでいれば、それはそうなるよね。
そんなことを思いながら静かに唇を離して、瞳を開けるとそこにはまだ瞳を閉じたままのあかりがいた。
京子「あかり」
181:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 23:46:26.60 ID:L62z0KCK0
あかり「だから、あかりからも、お返しさせてね」
そう言ってあかりの顔に私の顔が吸い込まれる。
唇に感じる今さっきと同じ感触、でも少しだけ触れ合ってる時間が長くて、それがたまらないほどに気持ち良かった。
終わりは静かにやってきて、私はそのままもう一度だけあかりを抱きしめて、あかりも抱きしめ返してくれた。
182:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 23:48:43.22 ID:L62z0KCK0
素直じゃない二人は、これから素直な二人になっていくんだから。
―おわり―
183:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/22(金) 23:52:10.88 ID:L62z0KCK0
これで終わります。
いつぞやかの京子「アッカリーン」スレでは、これを完結させることができなかったので、立てさせていただきました。
184:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/02/23(土) 00:05:20.58 ID:/+omzJAko
超乙。良かった。
185:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/02/23(土) 02:50:16.55 ID:zMOB2ycqo
乙
186:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/02/24(日) 11:58:35.28 ID:u7MH6zzyo
乙
187:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/02/25(月) 14:26:27.68 ID:+8VcpjXio
完結を見れてよかった!
超おつです!
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