過去ログ - 安価でシークレットゲーム5
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962:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 11:44:03.23 ID:nQ4y3AGI0
 秀夫はまた最初の一撃と同じ様に真上にハンマーを振り上げて雅史に叩きつけようとしていた。だが雅史は三回目のハンマーでの攻撃も、またしてもギリギリのところでかわす事に成功した。
 ハンマーの重さのせいだろうか。秀夫の動きが鈍く感じた。
 今だ。
 雅史は秀夫が重いハンマーをもう一度持ち上げるのに手間取っている隙に、秀夫の脇をすり抜けて駆け出した。上手くいったらしい。秀夫は雅史が逃走を企む事を想像もしていなかったようだ。
 秀夫は急いでハンマーを持ち上げて逃げる雅史を追いかけてきた。当然雅史は全力疾走で秀夫から逃げようとしていた。
以下略



963:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 11:44:51.82 ID:nQ4y3AGI0
 奥村秀夫(男子3番)は両手をひざに当てて、かがんだ体勢のまま大きく息を吸って吐いてを繰り返していた。
結局雅史に逃げられた。ハンマーの攻撃をことごとくかわされ、秀夫はイライラしていた。
 秀夫は出発して直後、茂みの中に入り、急いでデイパックをあけて武器を確認した。入っていたのはハンマー。ちょっとがっかりだった。なぜなら出発前の説明で榊原が銃の存在を口にしたからだ。
 こんなハンマーなどでは対抗できない。
 そう思っていたときに秀夫は茂みのそばを通り過ぎる女生徒を見たのだった。それは栗山綾子(女子6番)だった。秀夫は茂みから飛び出して綾子にハンマーで殴りかかろうと考えたのだが、綾子の手に拳銃らしきものが握られているのが見えたので、襲い掛かるのをやめたのだ。
以下略



964:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 11:45:58.68 ID:nQ4y3AGI0
 分校の教室からまだ生徒全員が出発したわけではなかった。大柄な体格をした若松圭吾(男子23番)は持参した大きなリュックを背負い、前に出発したクラスメートたちと同じように渡されたデイパックを手にして教室を出て行った。
「これで残ったのはあと一人、女子23番だけだ! お前が最後の出発だ!! 2分後までに用意しとけ!!」
 和田裕子(女子23番)は榊原に最後の出発が近いことを告げられて怯えきっていた。
「ったくぅ!! やっとおわる!! さすがに46人、いや2人死んでたな。44人もいるとなると長かったな」
 榊原は本当に疲れているようだ。声にも最初の頃のように勢いがないし、時折自分で腰をたたいていた。
以下略



965:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 11:48:08.51 ID:nQ4y3AGI0

 裕子はその光景を目にして今まで感じたことがないような恐怖感に包まれた。たった2分前に出発したばかりの生徒が出入り口付近で死んでいるのだ。圭吾が左胸を何かで深々と突き刺されているこの光景を目にしたら、どう考えても出入り口付近で待ち伏せしていた誰かに、出てきたばかりの圭吾が襲われ、そして胸に刃物か何かを突き刺された光景など容易に想像できるであろう。そしてそれが行われたのはたったの2分前。
 それに出てくる生徒をねらった襲撃者が圭吾一人だけを襲って、そのままこの場を立ち去るとは考えにくい。
 つまり圭吾を殺した誰かはまだこの付近にいるはずなのだ。
 突然脇から影が飛び出してきた。月明かりに照らされたその影はまさしく人間の姿であった。そしてその手には銀色に光る果物ナイフが握られていた。
以下略



966:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 11:48:53.25 ID:nQ4y3AGI0
 沼川貴宏(男子17番)は出発前に飯田健二に殴られた自分の顔をさすった。この痛みだと痣ができているかもしれない。けどそんなことは貴宏にしては大した問題ではなかった。問題は自分に支給された武器の方だ。
 貴宏は出発して分校を出たとたん、すぐにデイパックを開けて武器を確認した。もちろん銃が入っているのかどうかを確認するためだった。しかし、期待ははずれ、中に入っていたのは銃でも何でもなく、ただの斧であった。
 銃マニアの貴宏が欲しかったのは、もちろん銃オンリーだったので、斧が出てきたときはかなりがっかりだった。
 銃…。銃…。銃…。
 貴宏の頭の中では、「銃」という言葉のみがグルグルと回っていた。
以下略



967:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 11:49:28.74 ID:nQ4y3AGI0
 飯峯中3年A組の新担任を名のる榊原吾郎は、やっと全員が出発したので、分校内のメインコンピューターなどが設置されている教室に入り、そこに置かれたソファーにどかっと座り込んで休憩を取っていた。ただ体は休憩していても頭は働かせていた。
 ソファーの前の机の上に何十枚も積み上げられた資料のコピーをじっと見つめ、時折何かを考えているように腕を組んだり、頭をかいたりしている。
 この大東亜共和国には徴兵制がない。かわりに存在している制度がこのプログラムなのだ。目的は生徒同士を戦わせ、最後の一人になるまでかかった時間をはじめ、各種の統計を重ねることだ。だがこのプログラムにはそれ以外に、世間には表沙汰にはなっていない裏の目的もある。
「榊原上官」
 兵士の一人が榊原に近寄ってきた。兵士達は榊原のことを普段から「榊原上官」と呼んでいるのだ。
以下略



968:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 11:49:59.62 ID:nQ4y3AGI0
 右手に持ったこのクラスのスポーツ診断テストのデータが書かれた紙を見ながら榊原が言った。
「女子では新城忍だろうな。男子の剣崎程ではないとはいえ、こいつもかなりの空手の実力者だ。あと穴を狙うとしたら椿美咲なんかも運動能力が高いからいいかもな」
「そうですね」
「まあだいだいこの辺りが票の多くを占めてるな。しかし男子の沼川や、女子の吉本とかもこの調子だとダークホースになりかねんな。このクラスのプログラムは久々に面白いことになりそうだぞ」
 榊原は本当にわくわくしてきたようだ。
以下略



969:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 11:50:34.00 ID:nQ4y3AGI0
 霧鮫美澪(女子4番)はひたすら林の中を歩き続けていた。彼女はこの林の中で獲物を探しているのだ。
 このゲームで言う獲物とは、すなわち自分以外の生徒のことを指す。そう、雅史が予想していたとおり、美澪はこの殺人ゲームに乗ったのだ。彼女はとにかく誰かに出会ったら、誰だろうと問答無用で相手に襲いかかる気でいた。
 美澪の手には当然武器が握られているのだが、この武器がどうにも彼女に似つかわしくない。
 美澪のディパックに武器として入っていたのはエアウオーターガン。要するに水鉄砲のことだ。
 このエアウオーターガンは、夏祭りの夜店にでも売っているようなちゃちな水鉄砲とは違う。本体の上部に取り付けられているタンクには400ミリリットルもの水を入れておくことができ、この水を空気の圧縮された力を利用して数十メートルも離れた的に向かって撃つこともできるのだ。だが、いくら普通の水鉄砲より優れているとはいえ、やはり水鉄砲は水鉄砲である。つまり、美澪のディパックに入っていた武器は、いわゆるハズレの武器であるのだ。だとしたらなぜ美澪はそんな役にも立たないような武器を持ち歩いているのか? それは美澪にしか分からない理由があったのだ。
以下略



970:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 11:53:44.71 ID:nQ4y3AGI0
「さあ覚悟しな。お前は今から俺に殺されるんだからな」
「いいえ! 死ぬのはアンタよ!」
 美澪は再びエアウオーターガンを、ニ度三度と発射しながら、少し荒げた声で言い返した。須王はそれらすべてを、いとも簡単にかわしながら話す。
「お前も俺と同じように、このゲームが始まるよりも前に、人を殺した事があるんだろ?」
「そうよ! それがどうしたって言うのよ?」
以下略



971:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 11:54:43.06 ID:nQ4y3AGI0
 雅史はすでに奥村秀夫に襲われ、そして殺されかけたのだ。雅史の頭にはそのときの恐怖がこびり付いてしまっていた。
 また誰かに襲われる危険性があると思った雅史は、自己防衛のために銃を捨てることが出来なかった。だが、それでも誰かに銃を発砲するということを拒んだ結果が雅史に再び銃をディパックにしまわせたのだ。
 銃など撃ちたくはないが、手放すのも怖い。そんな複雑な心境だ。
 雅史は銃をデイパックの中に入れた。デイパックの口のファスナーを閉めようと手を伸ばしたが、いつでも銃を取り出せるように開けたままにしようと考えて手を引っ込めた。
 いつでも銃を取り出せるように…。そう考えている自分にまたムカムカした。
以下略



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