908:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:50:42.54 ID:868/ISGe0
 プログラム本部である小中学校から見て真東に位置するE=05エリア、茂みの下からひょっこり顔を覗かせた暗がりの中で光る2つの瞳に、広瀬邑子(女子十五番)はたたっと駆け寄ってしゃがみ、小さな手を差し伸べた。 
 警戒しているのだろうか、猫は近寄らずに耳をピクピクと動かしていた。 
  
 「…誰かの飼い猫だったのかもね、首輪が付いてる」 
  
909:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:51:08.75 ID:868/ISGe0
 邑子を挟んで永佳と反対側にしゃがんでいた望月卓也(男子十七番)に訊くと、元気は足りないけれど人懐こい笑みを返してくれた。 
  
 「おう、チワワの“いぬ丸”と、最近拾って飼い始めた“ワン太”! 
  すっげー可愛いの!」 
  
910:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:52:09.04 ID:868/ISGe0
 背丈は邑子と似ているのに邑子と違ってしっかりしていて気の強い阪本遼子(女子八番)の、「アンタ、永佳とか春川とかに甘えてばっかじゃ駄目なんじゃないの?」という声が聞こえてきそうだが。 
  
 いつまでも猫を相手にしているわけにもいかないので、邑子たちは猫に別れを告げ、再び歩き出した。 
 はっきりとした目的地はないのだが、クラスメイトを探すために。 
 クラスメイトを探し、殺めるために。 
911:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:54:10.31 ID:868/ISGe0
 身体に痛みを憶え、湯浅季莉(女子二十番)はゆっくりと瞼を持ち上げた。 
 顔の下敷きになっていた右手がじんじんと痺れているし、首が痛む。 
 まるで授業中によく眠った後のよう――そこまで考え、季莉は眉を顰めた。 
 おかしい。 
 季莉は上半身を持ち上げたのだが周りは暗くてよく見えないので、自分が体を預けていた板を触り、そこから手を滑らせてその全体像を把握した。 
912:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 10:56:18.44 ID:868/ISGe0
 536 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/08/05(月) 08:11:26.09 ID:IiiUx2HC 
 ゲーム本編はシナリオとの絡みがあるからなー  
 メインヒロインとされる霧切さんですら恋愛成分はかなり控えめだし  
 その制約の中でも、セレスさんの自由行動は特に回数が多くてラストの密度が濃い  
 アニメ組にも自由行動は是非やってもらいたい所だ  
913:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 10:56:57.59 ID:868/ISGe0
  東堂あかね(女子14番)の姿が見えなくなってから、澤部淳一(男子6番)は小さく息を吐いた。そこには、どこか安堵したような響きが含まれている。 
  
   
  
 ――ようやく厄介払いできたか。 
914:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 10:58:49.87 ID:868/ISGe0
  須田雅人(男子9番)が発したその一言は、この教室全体に波紋を広げていた。橘亜美(女子12番)も、一瞬我を忘れてポカンとする。それは、心の奥底では誰もが思っていたことだけれど、同時にこの状況では言うことを躊躇う内容でもあったから。 
  
   
  
 「それって、自分は参加したくないってことかなー?」 
915:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 10:59:56.35 ID:868/ISGe0
  高槻清太郎(男子十四番)は地面のぬめりに足を取られて滑り落ちぬよう気を付けつつ、斜面に対して平行に歩いていた。 
  七時間睡眠を基本としている普段の生活と比べて、十分な睡眠時間を取れたとは言い難いが、生死の狭間に立たされたこの状況下では、幾分でも休息をとれたというのは幸運だったのかもしれない。いろいろあって疲れていた夜間よりも、足取りが軽くなったような感覚があった。 
  支給されたバッグを肩に掛けているが、その重さもさほど気にならない。林間学校用に家から持ってきた私物も詰めているが、必要な物だけを選別した甲斐があった。先日買ったばかりのカードゲームの束など、破棄するのを躊躇われた物もあったが、命には代えられない。 
  支給品の他で残したものは、少ない衣類と菓子類くらいに留まった。 
  苦渋の決断の末に身軽さを手に入れることができた清太郎。だが、支給された武器が頼りなく、不安は残る。 
916:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 11:00:39.00 ID:868/ISGe0
 「俺らのアジトはすぐ近くだからさ。歓迎するよ」 
  そう言って拳銃の大男、浜田智史(男子十八番)は手を伸ばしてきた。 
  強く握手を交わし、清太郎は「よろしく」と返す。 
  そして今度は清太郎から、マシンガンの小太り男、佐久間祐貴(男子九番)へと手を差し出す。 
  祐貴は数秒間黙って清太郎の手を見ていたが、これまで緊張していた顔を緩めて、最終的に握り返してきてくれた。 
917:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 11:01:11.47 ID:868/ISGe0
  複雑に絡み合った植物の茎に足をとられそうになりながら、必死に逃げているのは高橋宗一(男子十五番)。お調子者で常にテンションが高い彼は、地声が大きくてボリュームの調整がきかず、内緒話等も周囲に聞かれてしまったりすることが度々ある。それがクラスメート同士の諍いの種になってしまう可能性もあるため、秀之からは注意レベルと評価されていた。 
 「くそっ、なんで俺がこんな目に……」 
  背後に迫る脅威に怯え、宗一は走りながら時々後ろを振り返る。 
  視界の中、流れていく森の景色の奥に、禍々しく殺意を滾らせる追跡者の姿をはっきりと捉えた。狐の面を被った転校生、危険レベルの辻斬り狐(男子二十五番)。その手には大型のククリナイフが握られており、重厚で切れ味の鋭そうな刃が暗闇で時折光る。 
  脳裏をよぎったのは、自らが斬り付けられる凄惨な光景。背筋が、ぞくっ、とした。 
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