103:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 00:47:24.86 ID:7LnCOhGJ0
東急池上線は、ほとんど混雑しない路線だったので好きだった。
池上駅を降りると、美希は池上通りを東に向かって歩いた後、途中の路地を左に入り、いつもの公園へと向かった。
天気も良いし、たぶん今日は先生に会えるだろう。
公園に着くと、美希は途中のファストフード店で買ったフライドポテトをつまみながら、池の周りを鼻歌交じりにブラブラと歩いた。
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2013/03/24(日) 00:50:11.07 ID:7LnCOhGJ0
「先生、ミキね―――何か、やる気無くなっちゃったの」
カルガモを眺めながら、美希は独り言のようにポツリと呟いた。
「何にも面白くなくて、ワクワクドキドキするものも無くて――つまんない。
すっごくタイクツなのに、何もやる気しないなーって」
105:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 00:52:22.48 ID:7LnCOhGJ0
「へぇ、これがカモ先生か」
橋の下まで近づいてきたカルガモを見ながら、プロデューサーはそう言って美希にお菓子を渡した。
「これが、って言わないの。ミキが小学生の時から、すっごく尊敬してる先生なんだから」
美希は、乱暴にプロデューサーからお菓子を受け取ると、カルガモに投げた。
106:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 00:56:37.70 ID:7LnCOhGJ0
「小学生の時からってことは、結構長生きなんだな、カモ先生」
プロデューサーは、指で年数を数えた。
仮に小学1年生から今日までとすると、9年か。
「ミキね、知ってるの。カモの寿命は3年か4年くらいなんだよ?」
107:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 00:59:09.54 ID:7LnCOhGJ0
「先生が子供のときも、きっとそうだったんじゃないかな」
プロデューサーのその言葉に、美希は一瞬ハッとした。
「カモは一見すると穏やかに浮いているように見えるが、水面下では必死に足を動かしている。
子供ならなおさらそうだろう―――なんてのは良く言う話だけどさ」
108:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 01:01:16.83 ID:7LnCOhGJ0
「その子は、お前のことを本気で尊敬している。
だから、お前がいなくなってしまった今、お前の代わりに自分がならなくてはと考えている」
美希は、プロデューサーが誰のことを言っているのかを直感的に察した。
「だが、そのために無理をしているのだとしたら――
109:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 01:03:45.12 ID:7LnCOhGJ0
【6】
秋も深くなったある朝、貴音が自分のロッカーを開けると、見慣れない服があることに気がついた。
自分のものではないし、自分が入れた記憶も無い。
服を手に取り、まじまじと見ながら首を捻っていると、更衣室に誰かが入ってきた。
110:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 01:06:09.30 ID:7LnCOhGJ0
「ほら、お姫ちんの隣のロッカーって、ミキミキのでしょ?」
真美は、貴音のそばにあるロッカーを指差した。
「ホントはこの服、ミキミキのロッカーに入れるつもりだったんだ。
でも、間違えて亜美がお姫ちんの所に入れちゃったみたいで」
111:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 01:08:34.68 ID:7LnCOhGJ0
「美希に対する貴女方の厚意を、私は邪な眼で捉えてしまいました」
貴音は、もう一度深々と二人に頭を下げた。
「や、止めてよお姫ちん! 亜美達、そんなの全然気にしないって!」
「そうだよ! 元々悪い事してたのは真美達だもん!」
112:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 01:11:33.49 ID:7LnCOhGJ0
ジュピターとエントリーが被った事に気づいたのは、オーディション本番の三日前だった。
迂闊だったと、プロデューサーは自分のチェックの甘さを悔いた。
すぐにエントリーを取り下げようと受話器に手を伸ばした時、雪歩がプロデューサーに嘆願したのだ。
「プロデューサー―――大丈夫です、やらせて下さい」
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