過去ログ - 美希・雪歩「レディー!」
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161:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:39:30.53 ID:7LnCOhGJ0
 雪歩の父は、背の高い男だった。
 年齢は50歳前後のはずだが、そんな年には見えなかった。
 肌のつや、身のこなし、そして何よりも引き締まった端正な顔立ちを見ていると、30歳代の前半くらいにも見えた。

 雪歩の父の後ろには、それまで律子を案内していた坊主の男がずっとついていた。
以下略



162:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:41:25.18 ID:7LnCOhGJ0
 フン、と雪歩の父は小さく鼻を鳴らした。
 律子は、目の前の男の一挙手一投足から目が離せなかった。
 いつ、どんなに危険な一振りが繰り出されるか知れなかった。

 その時、入り口の襖がスーッと開いた。
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163:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:44:26.03 ID:7LnCOhGJ0
「俺はあなた方を憎んでいる」
 律子が湯飲みを置いたのを見計らい、雪歩の父が突然切り出した。

 律子は、黙って頷いた。
 内心は、改めて面と向かって言われたことで、さらに緊張が増していた。
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164:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:47:16.41 ID:7LnCOhGJ0
「雪歩さんは――」
 律子は、膝の上に置いた手を握り締めた。

「―――雪歩は、私達の事務所の現状を憂いていました。
 自分が何とかして変えなくてはと、きっと自分にそう言い聞かせ、これまで頑張ってきてくれていたのだと思います」
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165:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:49:43.19 ID:7LnCOhGJ0
「政治家みてぇな事を抜かしやがって」
 雪歩の父は、鼻を鳴らした。
「なら、あなたは今日ここへ何をしに来たのだ。
 娘を連れ戻すでもないのなら、わざわざ自分の決意表明を俺に聞かせにきたのか?」

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166:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:51:06.67 ID:7LnCOhGJ0
「―――確かに渡しておく。
 確認をするが、あなたは雪歩がアイドルを続けなくとも構わない、それで良いのか?」

「はい。ですが――」
 そう言いかけて、律子は笑みを浮かべた。
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167:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:54:12.44 ID:7LnCOhGJ0
「しかし、時にそれ以上のものを感じさせるほどの頑張りを、あの子は見せていました。
 私達が心配になるほど、ずっと遅くまで練習をしたり、見えない努力を重ねてきました」
 雪歩の父は頷いた。
「それは知っている」

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168:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:56:34.29 ID:7LnCOhGJ0
 若頭が先導し、三人は縁側を少し歩き、先ほど通った庭園まで戻った。

「あれは何だと思う」
 雪歩の父は、庭園の隅に立っている離れを指差し、律子に尋ねた。
 唐突に聞かれたため、律子は何のことやら見当もつかず、首を捻った。
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169:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:58:28.13 ID:7LnCOhGJ0
 雪歩の父は、鼻を鳴らした。
 今度は、笑みが混じっているように思えた。

「確かに、あなたの言う通り、子供というのは親の思うように育たないのが常のようだな」
 そう言った後、雪歩の父は表情を改めて続けた。
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170:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 03:00:19.14 ID:7LnCOhGJ0
 プロデューサーが、血溜まりの中にうつ伏せで倒れている。
 その横で、美希がまっすぐにこちらを見上げている。

 美希の顔には少し影がかかっており、表情は分からない。
 しかし、明らかに階段を上った先―――踊り場にいる自分を睨み上げている。
以下略



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