96:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 00:31:03.43 ID:7LnCOhGJ0
「何で、あの時、美希ちゃんに追いつこうって――頑張ろうって、誰も思わなかったのかなぁ――!」
雪歩の目から、大粒の涙がこぼれた。
「美希ちゃんを孤立させちゃって、苦しめたのは、私達なんですぅ」
「いや、俺達だ」
97:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 00:32:16.66 ID:7LnCOhGJ0
少し遅めの昼休みが終わり、予定がある者は皆事務所を出て行った。
久々に出前を取ったこともあり、給湯室には食器類がいつもより余計に多く積まれていた。
ゴミ出しとテーブル拭きを終えたやよいが、それらを前にもう一度袖をまくり直す。
「いいわよ、高槻さん。洗い物なら私がやっておくから」
98:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 00:34:04.40 ID:7LnCOhGJ0
初めのうちは、普段使う食器やお茶っ葉、詰め替えの洗剤の場所も分からなかった。
しかし、伊織と一緒にやよいの手伝いをするうちにだんだん覚えてきたものだ。
洗い物は15分ほどで終わった。
やよいなら、おそらく10分もかからないのだろう。
99:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 00:36:28.08 ID:7LnCOhGJ0
「お疲れ様です、あずささん」
千早は状況を察知し、なるべくオーディションの事には触れないようにと思った。
「あら〜、千早ちゃんお疲れ様。何か冷蔵庫に飲み物入ってたりしないかしら〜?」
あずさは、普段通りの口調で千早と挨拶を交わすと、冷蔵庫を開けて中身を物色し始めた。
100:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 00:39:25.11 ID:7LnCOhGJ0
「―――うふふ、冗談よ」
そう言って、あずさは手元のコップを戻し、別のコップを手に取った。
「もしかしたら、戻ってきてくれるかも知れないもの。
勝手に使ったら怒られちゃうわね」
101:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 00:42:50.68 ID:7LnCOhGJ0
「千早ちゃんは正直ね、でも――」
あずさは、麦茶を入れたコップを、物憂げな表情をしながら手の中で揺らしていた。
「本音をぶつけないまま付き合うことが、自分や皆のためになるのかしら」
千早は、再び驚いた顔をしてあずさを見た。
102:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 00:44:48.90 ID:7LnCOhGJ0
「美希ー、ゲーセン行かないのー?」
帰りのホームルームが終わっても、美希は自分の席から動こうとしなかった。
友人が呼びかけても、彼女は片肘を机につき、窓の外をボーッと眺めたままである。
103:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 00:47:24.86 ID:7LnCOhGJ0
東急池上線は、ほとんど混雑しない路線だったので好きだった。
池上駅を降りると、美希は池上通りを東に向かって歩いた後、途中の路地を左に入り、いつもの公園へと向かった。
天気も良いし、たぶん今日は先生に会えるだろう。
公園に着くと、美希は途中のファストフード店で買ったフライドポテトをつまみながら、池の周りを鼻歌交じりにブラブラと歩いた。
104:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 00:50:11.07 ID:7LnCOhGJ0
「先生、ミキね―――何か、やる気無くなっちゃったの」
カルガモを眺めながら、美希は独り言のようにポツリと呟いた。
「何にも面白くなくて、ワクワクドキドキするものも無くて――つまんない。
すっごくタイクツなのに、何もやる気しないなーって」
105:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 00:52:22.48 ID:7LnCOhGJ0
「へぇ、これがカモ先生か」
橋の下まで近づいてきたカルガモを見ながら、プロデューサーはそう言って美希にお菓子を渡した。
「これが、って言わないの。ミキが小学生の時から、すっごく尊敬してる先生なんだから」
美希は、乱暴にプロデューサーからお菓子を受け取ると、カルガモに投げた。
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