187:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/29(水) 06:59:11.14 ID:wqPpjqSYo
わたしがベッドに寝転がっていたのをいいことに、彼はわたしの椅子に勝手に座る。
注意しようかと思ったけれど、やめた。
このところのツキはあまりに追いつめられているようで、思わず咎めるのを遠慮してしまうほどだった。
188:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/29(水) 07:00:09.11 ID:wqPpjqSYo
「ねえ、あなたは何を欲しがってるの?」
わたしは思わず訊ねた。何がこの人をこんなに苦しめているんだろう。
何のために、この人はこんなにつらそうなんだろう。
189:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/29(水) 07:00:35.30 ID:wqPpjqSYo
しばらく、部屋の中には何の変化もなかった。雨の音だけがずっと続いている。
気付けばわたしは、本を読むのをやめてツキの方をじっと見つめていた。
やがて彼は、やはり身じろぎひとつせず、顔もこちらに向けないまま、
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2013/05/29(水) 07:01:02.03 ID:wqPpjqSYo
不意に彼は、何かに気付いたように顔をあげた。
それからわたしの顔をじっと見た。何かに驚いているような目だ。
「なに?」
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2013/05/29(水) 07:02:03.62 ID:wqPpjqSYo
「……急に何?」
「前は、レコードだった」
192:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/29(水) 07:03:08.41 ID:wqPpjqSYo
◇
ツキはそのようにして、この屋敷での暮らしを続けた。
いなくなる気配もなければ、例の何かを「取り戻す」こともできてはいないようだった。
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2013/05/29(水) 07:04:00.31 ID:wqPpjqSYo
「出口」
ツキは不意にそう言った。
194:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/29(水) 07:05:11.48 ID:wqPpjqSYo
◇
ツキがこの屋敷で暮らすようになってからも、わたしは毎夜同じ夢を見た。
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2013/05/29(水) 07:05:39.97 ID:wqPpjqSYo
つづく
196:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/29(水) 21:33:13.73 ID:/ba8P3cAO
乙。
全体が見えてこないと中々不気味だ。
外界には二人と同じ人間はいないのか。
197:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/29(水) 23:12:17.73 ID:4iSIu9Kro
乙
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