291:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/05(水) 05:36:11.30 ID:YX4Y62yro
彼女なりに、噛み砕いて説明したつもりなのかもしれないけれど、わたしにはさっぱり分からなかった。
シラユキは少し黙った。それから気を取り直すように深呼吸をする。
長い睫毛が、かすかに揺れた。
292:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/05(水) 05:36:51.74 ID:YX4Y62yro
でも、少し考えてどうでもいいやと思った。
だってここは結局、わたしにとっての現実ではないのだ。
夢のようなものだ。
293:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/05(水) 05:37:39.05 ID:YX4Y62yro
いまさらそんなことを知ったところで、何の意味があるんだろう。
「あなたは世界が生み出されたとき、既にこの世界に存在していました。
ですが、厳密には、あなたはこの世界、この街の住人ではありません。
294:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/05(水) 05:38:07.59 ID:YX4Y62yro
なんだ、とわたしは思った。
じゃあもうわたしの結論は決まっているんじゃないか。
「つまり、わたしがここに居続けることを選べば、何の問題もないの?」
295:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/05(水) 05:39:01.53 ID:YX4Y62yro
「……本当に、構わないんですか?」
雨音は続く。わたしはシラユキの不安そうな表情がおかしくてしかたなかった。
296:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/05(水) 05:39:41.39 ID:YX4Y62yro
「わたしは、あなたを丘の下から隔離して、できるだけ街から遠ざけるように行動してきました。
それはたぶん、この選択を迫るためのこと、だと思います。現実を望んだときは、現実に帰れるように。
わたしはその為の保険のようなもの、なんだと思います」
297:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/05(水) 05:40:10.59 ID:YX4Y62yro
この世界で暮らし続けること。"永遠"が確定されること。それは現実世界における死を意味する。
理解しにくい、納得しにくい理屈だ。でも要するに、言葉の使い方が違うだけのことなんだろう。
ここから出るか、出ないか。
298:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/05(水) 05:40:38.72 ID:YX4Y62yro
その人は根本的に誤解していたのだ。
死を望みながらも、最後の一歩を踏み出さないのは、本心だとか、無意識だとか、そういうものが理由じゃない。
299:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/05(水) 05:41:32.40 ID:YX4Y62yro
「じゃあ、あなたは、死にたいんですか?」とシラユキは言った。
「正確に言うと、もう生きていたくない」
300:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/05(水) 05:42:35.73 ID:YX4Y62yro
彼女は悲しそうな顔をした。でも、本当にそうなのだ。
もう、全部終わってしまって構わない。
現実はわたしにとって積み上げられた石ころに過ぎない。
301:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/05(水) 05:43:05.47 ID:YX4Y62yro
「――シラユキという猫も、あなたにとっては石ころでしたか?」
「……どうだったかな」
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