過去ログ - 三船美優「私がアイドルになった理由、ですか?」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 22:59:48.81 ID:2jDCoqBeo
「そういえば美優さんがアイドルになった理由ってなんなんですか?」

 私がアイドルになった理由、ですか?

 そうですね……。

「ちょっと気になっただけなんで、言いたくないなら別に構いませんよ」

 少し長い話になりますけど、いいでしょうか?
 前にお話しした、あの子の話でもあるんです。
 
「ええ、そういえばなんて名前だったんです?」

 え……名前? あの子の、ですか?

「はい、ゴールデンレトリバーだったのは聞きましたけど、他のことも教えてもらっていいですか?」

 いえそれは……まだちょっと言葉にするには大きすぎて……。

「そう、ですか。うん、美優さんが話しやすいように話してください」

 はい、ではあの子で……。


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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 23:00:38.08 ID:2jDCoqBeo
 初めて会ったときのことは忘れません。

 父の知り合いの方から、ゴールデンレトリバーの仔犬を譲っていただけるという話があったんです。
 それで、どうしても父が犬を飼いたいってきかなくって。
 私は最初反対してたんです。
以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 23:01:59.31 ID:2jDCoqBeo
 飼い主さんのところで母犬と一緒にいるところを見ました。
 その中で、とても要領が悪い仔犬がいたんです。
 その子は、他のきょうだいに隅っこに追いやられていました。
 おっぱいを吸うのも一番最後だったというお話でした。
 その仔犬があの子だったんです。
以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 23:03:23.38 ID:2jDCoqBeo
 二、三ヶ月たったある日、父がキャリーケースを持って帰ってきたんです。
 その日から、あの子が我が家の一員になりました。

 犬との生活は、本を事前に読んでいたとはいえハプニングの連続でした。
 まず、トイレのしつけが大変でした。
以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 23:04:34.90 ID:2jDCoqBeo
 その頃は、父の仕事の都合の関係で、転校が多かったです。
 引っ込み思案な性格もあって、新しい学校になかなかなじめませんでした。
 それでやっと仲良くなったと思ったらまた転校です。
 そのせいか、ずっと一番の仲良しはあの子でした。

以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 23:05:35.33 ID:2jDCoqBeo
 そうそう、一緒に家出もしたことがあります。
 高校生のとき、門限にちょっと遅れて家に入れてもらえなかったことがあったんです。
 それで、売り言葉に買い言葉で言い合いになって。

 最後には、お前なんかうちの娘じゃない、敷居も跨がせん、とか父が言い出したんです。
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 23:06:18.61 ID:2jDCoqBeo
 玄関前でじっとしていてもしょうがないので立ち上がって、あの子のリードを手に取りました。
 一人と一頭のエスケープ、スタートです。
 実際、あの時はちょっとハイになっていました。

 近くのコンビニエンスストアで飲み物食べ物とかドッグフードなんかを買いました。
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 23:07:04.91 ID:2jDCoqBeo
 そういえばこんなこともあったんですよ。

 フリスビーが好きだったのに、うまくキャッチできないんです。

 こう私が投げたフリスビーをあの子が追いかけます。
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 23:07:47.34 ID:2jDCoqBeo
 私の生活には、いつもあの子がいました。
 けれど学校を卒業して、就職するようになって。
 そうやって、だんだん一緒に過ごせる時間が少なくなって。

 私がずっと行ってた散歩も母に代わってもらうことが多くなりました。
以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 23:08:33.78 ID:2jDCoqBeo
 あの子はどんどん年を取っていきました、あたりまえのことですけど。
 そのうち大きな病気もして手術を何回もしました。

 だんだんあの子は弱っていきました。
 足腰も弱って、散歩に行くこともなくなりました。
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/06/09(日) 23:17:52.72 ID:UVmzFNUG0
美優さんのSSとは俺得


12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/06/09(日) 23:32:24.21 ID:jlW2OSNb0

〜美優さんが泣いています。暫くお待ちください〜




13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 23:36:20.43 ID:2jDCoqBeo
 お待たせしました……続けます。


 なんとか持ちこたえてくれてるよ、駅まで迎えにきてくれた父が言いました。
 会話はそれだけで、家に着くまではお互い無言でした。
以下略



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 23:37:22.40 ID:2jDCoqBeo
 あんまり悲しいと人は泣けないって、本当かもしれませんね。
 感情の針が振り切れてしまって。
 鼻の奥がつんと痛くて、どうしようもなくて。
 けれど……泣けないんです。

以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 23:38:10.17 ID:2jDCoqBeo
 初めて会った日のことを憶えてます?

「ええ、あれはちょっと忘れられないですね」

 実はあの日ってあの子のお墓参りの帰りだったんです。
以下略



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 23:42:49.79 ID:2jDCoqBeo
 そうやってひとしきり泣いたら、すっきりして。
 ようやくあの子の思い出と向き合うことができました。
 少しだけですけど。

 プロデューサーさんには感謝しています。
以下略



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 23:43:45.81 ID:2jDCoqBeo
 そうですね、結果オーライです。

「それにしても……なんだか辛いことを思い出させたみたいで、すみません」

 いえ……。
以下略



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 23:44:41.62 ID:2jDCoqBeo
 おつかれさまでした、プロデューサーさんに挨拶をして事務所を出る。

 日はすっかり落ちて、辺りはすっかり夜の気配で満ちている。
 空の端は、街の灯りに照らされてぼんやりと明るい。
 そのせいか、星の明かりは頼りなくてよく見えない。
以下略



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/06/09(日) 23:49:08.81 ID:2jDCoqBeo
以上を持ちまして
「私がアイドルになった理由、ですか?」
を終了とさせていただきます。

皆様お手回り品などをお忘れなきよう、足下にお気をつけてお帰りください。


20:へびのあし[sage saga]
2013/06/09(日) 23:50:53.56 ID:2jDCoqBeo
「美優さん、ちょっとちょっと」

 どうしたんですかプロデューサーさん。

「コンパニオンアニマルをなでることで、精神安定効果があるらしいです」
以下略



21:返事はもう決まってるよね[sage saga]
2013/06/09(日) 23:51:46.16 ID:2jDCoqBeo
 あの、くすぐったかったりしません?

「大丈夫です」

 その……こんなの嫌じゃないですか?
以下略



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