14: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/13(木) 22:41:12.89 ID:1eqe0XcWo
「わかりました、Pさん。でも、Pさんのレッスン、楽しみなんですよー? 厳しすぎず、簡単すぎずで、私にぴったりですからっ」
『はは、そう言ってくれるのはありがたいな。何かあれば、また相談してくれ』
「はいっ、では行ってまいりますよー♪」
彼女はそういって、この寂れた事務所から出ていく。最初は、ふわふわとした雰囲気で危なっかしいと思っていたが、思いのほかしっかりしていると、今では知っていた。
書類もほとんどない、仕事もほとんどない事務所。彼女以外に所属アイドルはおらず、やることは彼女を鍛え上げる事、そしてパイプラインを太く、新しいものに替えて行くことだった。
鍛え上げるのも、俺自身で行っていたこともあり、必然的に一対一の場面が多かった。円滑なコミュニケーションの為、何度か彼女と食事に行くこともあった。
その甲斐あって、彼女からの信頼を勝ち得ることはできたとは思う。このどうしようもない事務所に愛想を尽かしてくれていないことが、証左になるだろう。
ただ、問題としては――。
『……少し、懐かれ過ぎたかな』
嬉しい事なのだが、目下それが現在の問題になりつつある。俺としても、不覚にも情が移りすぎて、移籍先のプロダクションを厳選しすぎるという弊害が出ていた。
アイドルを移籍させること自体は、もう慣れたことだ。させようと思えば、これまで何度も移籍をしているところに連絡を入れれば、今日明日で話はまとまるだろう。
だが、俺は彼女の才能に惚れ込んだ。適当なところに割り振って、端した移籍金を受け取る、なんてつもりは、頭の中から吹き飛んでいた。それに、彼女ならトップアイドルになれるだけの器量があるのだ。
まだ手元に置いておきたい、という独占欲も手伝い、せめて確実にトップアイドルになれるような場所に移籍させたい、と思うのは悪いことではないだろう。
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