785: ◆/xGGSe0F/E[saga sage]
2013/10/23(水) 02:44:49.76 ID:KgQvzn720
どうも私です。
連投で鬱陶しいかと思いますが、通常作を投下します。
読みたくないと思われる方は、スルーしてください。
ショートショート風に書いてみました。
786:You Wandering In The Teacup (お題:紅茶の香り) 1/10 ◆/xGGSe0F/E[saga sage]
2013/10/23(水) 02:48:12.78 ID:KgQvzn720
私が勤める企業もここ最近、めっきり業績を上げ、私自身もそれにつれて忙しくなってきていた。主に外国の家具を日本
に輸入して販売する企業に勤めているのだが、最近の外国家具ブームが始まる前から、我が社には先見の明があった。三年
ほど前から北欧の国のとある家具デザイン企業などと繋がりを持ち、そこから多く、安く家具を仕入れることが出来たのだ。
そしてその北欧製の家具が、日本の中で、我が社の予想以上のヒットとなったものだから、会社の経営も右肩上がりに良く
なっている。だから、私の勤める販売促進部の仕事も、倍以上に増えたのだった。しかしそれはそれで、私にとっては嬉し
787:You Wandering In The Teacup (お題:紅茶の香り) 2/10 ◆/xGGSe0F/E[saga sage]
2013/10/23(水) 02:49:30.65 ID:KgQvzn720
午後八時。
今日は思ったよりも早く、仕事に一区切りつけることが出来た。
書類の作成も終わり、私は部長や後輩に声をかけてから、帰宅をすることにした。
会社のある駅から電車で三駅分。私の住む町はこんなにも近くなのに、二週間も帰らないだなんて、思えば不思議な感じ
788:You Wandering In The Teacup (お題:紅茶の香り) 3/10 ◆/xGGSe0F/E[saga sage]
2013/10/23(水) 02:51:11.81 ID:KgQvzn720
七階に上がって自らの部屋の前に立っても、やはり灯りは点いたままだった。私の見間違いでもなく、リビングとダイニ
ングの灯りがそこに灯っている。表札も、間違いなく【稲葉】と言う私の苗字が記されていた。
どうしよう、やはり警察に連絡するべきだろうか。
どうしていいか分からずに、私が部屋の扉の前で無防備に迷っていると、いきなり扉のノブが音を立てて回されるのが分
789:You Wandering In The Teacup (お題:紅茶の香り) 4/10 ◆/xGGSe0F/E[saga sage]
2013/10/23(水) 02:52:13.94 ID:KgQvzn720
「いただきます」
私がそう言うと、女はきらきらとした瞳で、私の事をじっと見て微笑んだ。
「うんっ、召し上がれ!」
なんだか食べづらい。
790:You Wandering In The Teacup (お題:紅茶の香り) 5/10 ◆/xGGSe0F/E[saga sage]
2013/10/23(水) 02:53:18.56 ID:KgQvzn720
そんなことを考えながら夕食を咀嚼していると、インターホンの音が甲高く鳴らされるのが聞こえた。
「はいはーい」
凛と名乗った彼女は、パタパタとスリッパを鳴らしながら、玄関へと向かった。まるで私の妻として当然の義務みたいにして。
そしてすぐに玄関から、女性同士の姦しい声が聞こえてきた。
791:You Wandering In The Teacup (お題:紅茶の香り) 6/10 ◆/xGGSe0F/E[saga sage]
2013/10/23(水) 02:54:16.15 ID:KgQvzn720
そっと私から離れた彼女は、囁くように私の耳元で喋った。
「お風呂入れてくるから、ちょっと待ってて。あ、薬箱の位置は変えてないから、早め頭痛薬飲んだ方が良いと思う。あと、
まーくんの好きな紅茶、入れてあげるから。今日は蜂蜜も入れてあげるね」
私は目を瞑り、うとうととしながら、彼女の柔らかくたおやかな声を聴いていた。椅子にもたれたまま、先程の心から安
792:You Wandering In The Teacup (お題:紅茶の香り) 7/10 ◆/xGGSe0F/E[saga sage]
2013/10/23(水) 02:55:01.02 ID:KgQvzn720
そんな唐突に変わった生活が、三年ほど続いたころ。異変が起きた。
この生活になってから、是が非でも仕事を切り上げて毎日家に帰るようになっていたから、その日も私は午後十時に家へ
と帰りついた。
そして扉を開けて、中へと入る。夕食の香りと、彼女特有の紅茶の香りが、私の家特有の匂いとして、鼻をくすぐってくる。
793:You Wandering In The Teacup (お題:紅茶の香り) 7/10 ◆/xGGSe0F/E[saga sage]
2013/10/23(水) 02:55:43.06 ID:KgQvzn720
妻の姿が見えなくなってから、さらに七年後。
妻がよく咳をするようになった。体調が悪いと訴えるようになった。私は妻を励ますが、しかし妻の体を撫でさすってや
ることも、抱きしめて慰めることも出来ない。最近は、触れることまでできなくなってしまっていた。しかし声は伝わる。
言葉で励ますことが出来る。私は、妻の看病をしてやれない自分を不甲斐なく思いながら、しかし何とか妻が体調の悪い時
794:You Wandering In The Teacup (お題:紅茶の香り) 9/10 ◆/xGGSe0F/E[saga sage]
2013/10/23(水) 02:57:11.45 ID:KgQvzn720
妻が入院したらしい。
私は市村さんの奥さんから連絡を受けて、すぐさま病院に向かった。どうやら買い物帰りに郵便受けの前で倒れていると
ころを彼女が発見して、救急車を呼んでくれたらしい。
病室には、六つほどベッドがあり、そこには凛の姿はもちろん、誰の姿もなかった。
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