3: ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2013/10/14(月) 15:06:45.41 ID:BLnFpW2L0
しばらくして正気づくと、男達はすでに引き上げていたようだった。気配を入念に探り慎重に天井から降り立つと、執拗に荒らされた部屋は、上から見ていた様子よりずっと酷い有り様に思えた。
蛍光灯とカバーは見るも無惨に散らばり、他の残骸と共に床を埋め尽くしている。これでは電気をつけることすら出来ない。
それでも月の弱い光を受けて浮かび上がる部屋でさえ、俺にとっては愕然とするものだった。所々塗装が抉られ歪んだ家具に、穴の空いた窓や壁、廊下まで吹き飛んだ扉やヒビの入った姿見を見て、俺は意識が遠くなる気がした。
だが、現実は再び気絶することさえ許してはくれなかった。ただ呆然と立ち尽くしている訳にもいかず、俺の足は箒が置いてある台所へと向かった。
二人組による被害は家全体に及んでいた。当然、台所だけが免れているはずもなく、食器類や棚のガラスはやはり粉々に打ち砕かれていた。
割れた窓から月明かりと冷たい夜の空気が侵入する。記憶と薄明かりを頼りに、箒を探した。
台所の床一面に陶器の破片が散乱し、箒より先に一際月光を反射する白いコップの残骸を見つけてしまった。母が生前大事にしていたらしい、いつも食器棚の手前にしまってあったコップだ。見覚えのある花の模様と持ち手の一部だけが残り、粉砕されていた。この時も、まだ俺は涙が出てこなかった。
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