過去ログ - 泉「未来へのテトラード」
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23:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/01(水) 21:11:24.52 ID:mMrPH74Do

 そして連れて来られたのはキッチンカウンターの向こうであった。
 そこはカーペットとローテーブル、そしてソファとテレビが置いてあるリビングのような場所である。
 ここは最初さくらと亜子が帰ってくるやいなやソファでくつろいだり、その後泉が交代するようにソファに座ったりしていた。

 しかし、今キッチンからここに連れて来られる意味が無い。

 準備が終わって料理が始まったばかりとはいえ、晩御飯の調理を中断してまでするようなことなのだろうか。
 狭いベランダへと繋がれている大きな窓からは薄暗い夜空が見えた。

「もー、やっぱりPちゃんはまだまだやなー」
 何も聞かされていないのでどう反応することもできず、ただ困惑して立ち尽くしていると、亜子がやれやれといった風に呆れて見せた。

「いや、まず何があるのか教えてくれよ」
 だが、こちらから言えることはただこれだけである。

 それを訊かないことには何も始まらないのだ。
 恥も外聞も知ったこっちゃない、と直球で質問すると、完全にお手上げ状態の俺の視線を導いたのは、何かを期待したような目をしていた泉であった。

「まあ、分からなくても不思議じゃないよね、ふふ。……はい、じゃああれを見て?」
 こちらを見つめてくすり、と微笑んだあと、泉はおもむろにテレビの横、部屋と不似合いな程真っ白なテレビ台を指さした。

 テレビはデジタルではあるものの、いつ頃買い替えたのかすら思い出せない程に古く、また使用頻度もそこまで高くないために俺にとって無用の長物となりつつある。放送に限ってはかくもいわんや、である。

 日常的に使う事といえば専らニューウェーブのライブ映像であったり、参考になりそうな先輩やライバルのミュージックビデオなどを見る事である。
 そのためか、テレビ台の下に収納されたブルーレイレコーダーだけがテレビ台よりも更に異色を放っているのであった。

「何って、普通のテレビじゃ――ん?」
 いつもの背景と同化したテレビを見ろと言われても、見えるものはただの静物である、と軽く一瞥し、泉に再度視線を向けようと思ったその時だった。

「気づきましたかぁ、プロデューサーさんっ」
 誰よりも早く、さくらが俺の変化に気づく。
 たった少し視線を戻しただけなのにな、と彼女の観察眼には恐れ入る。

「あれは……アルミラックか? しかも何か載ってるな」
 テレビの横のデッドスペースに置かれているのは小さな銀色のラックで、恐らく二千円もしないシンプルなものだろう。

 それでも真新しさを感じるのは、今日までそんなものは部屋に存在しなかったからである。



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