41: ◆m03zzdT6fs[saga]
2014/02/03(月) 16:15:39.43 ID:FaSxPE4yo
『……あぁ、いい加減、勘弁してほしいよなぁ』
それを本人の前で言う度胸はないが、愚痴ぐらいは許してほしい。そう思いながら、すでに九時を指そうとしている時計を見上げ、大手プロダクションを後にする。
今日は幸いにも残業がない――正確に言えば、課長がいないので無理に課せられる残業がないため、こんなに早くに帰れると言うわけだ。
42: ◆m03zzdT6fs[saga]
2014/02/03(月) 16:16:15.74 ID:FaSxPE4yo
『……さすがに、いないか』
いったい何の話かと言えば、昼間に見かけた色白の少女のことである。そして、今いる場所から十数メートル先に彼女がいた場所があった。
当然のことだが、そこに彼女の姿はない。まあ、きっと誰かを待っていたのだろう。大きな荷物から、旅行から帰ってきて、迎えを待っていたのかもしれない。
43: ◆m03zzdT6fs[saga]
2014/02/03(月) 16:16:42.78 ID:FaSxPE4yo
(……あれ、ルール何だっけ)
ほぼ二年ぶりにダーツをするせいもあってか、すっかりダーツのルールを忘れつつあったが、”301”というゲームを選択した。
確か、得点が301点になるとか、そんなのだったはずだ。そう思いながら、俺は所定の位置につく。
44: ◆m03zzdT6fs[saga]
2014/02/03(月) 16:17:15.59 ID:FaSxPE4yo
(ああ、ルール思い出したぞ。引いていく奴だったな)
そんなルールだった気がする、と思い出した俺は、続けざまにひょい、ひょいと二本ダーツを投じた。
一投目は中心から少し外れて8のシングルだったが、二投目はアウターブルに当たり25点だった。
45: ◆m03zzdT6fs[saga]
2014/02/03(月) 16:17:42.08 ID:FaSxPE4yo
『……まあ、こんなものだろう』
少し息をついて、傍に置いてあったモスコーミュールを一口含む。そこそこの腕は、まだ残っているらしい。そう思って、グラスをテーブルに置いたときだった。
「――お兄さん、凄いね。でも、しょぼくれてるなぁ、一人で寂しくない?」
46: ◆m03zzdT6fs[saga]
2014/02/03(月) 16:18:21.26 ID:FaSxPE4yo
「んー? あはは、特に理由はないんだけれどね。ダーツバーに一人で来るなんて珍しい、と思って遠目に見ていたら、結構上手い人だったからさ」
彼女はひょうひょうとした様子で、少し肩を竦めながらそう言った。よく見ると、二つほど向こうのテーブルに、大きなキャリーバッグと昼間のコートが置いてある。
『ええと、つまり?』
47: ◆m03zzdT6fs[saga]
2014/02/03(月) 16:18:52.52 ID:FaSxPE4yo
『おい、君、未成年じゃ……』
「だいじょーぶだいじょーぶ、これ、ジンジャーエールだから。それに、あたしは君じゃなくて、シューコ。塩見周子だよ」
彼女、塩見周子というらしいが、ともかくそんな気楽というか、能天気というか。
48: ◆m03zzdT6fs[saga]
2014/02/03(月) 16:19:42.33 ID:FaSxPE4yo
『で、周子、ちゃん、だったか? こんな時間まで外をうろうろしてるもんじゃないと思うんだが』
とかく、俺は思ったことを彼女に言う。時計を見ると、もうそろそろ九時の半ばを過ぎようとしている。そろそろ、青少年なんたら条例に引っかかる時間だろう。
「まーねー。でも、やむにやまれぬ事情ってやつ? まー、細かいことは気にしないでさ、お兄さんなかなかダーツ上手いみたいだし、勝負しようよ」
49: ◆m03zzdT6fs[saga]
2014/02/03(月) 16:20:10.35 ID:FaSxPE4yo
実際、彼女には悪いが、彼女の性格はそんな感じと言って差し支えないし、ほとんど面識のない俺からしても、彼女の美貌は特上級だろう。
一世一代の大勝負。こんなきれいな女性からの誘いを断る。これさえできれば、あのうるさい課長の無理強いさえ、はねのける事が出来るかもしれない。
そう思って、俺は口を開いた。
50: ◆m03zzdT6fs[saga]
2014/02/03(月) 16:21:15.38 ID:FaSxPE4yo
今回の更新は以上です。次回の更新は週半ばを予定していますが、あくまで予定ですのでご了承ください。
それでは、ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。
51:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/03(月) 16:31:42.12 ID:vtVGDiWVo
おつおつー
しゅーこちゃんにおねだりされて抵抗できる男はいない(確信)
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