1:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/02/07(金) 01:12:28.19 ID:XywmlDJw0
「あの子、林間学校のとき、ずっと一人でいたんです」
「先生が心配して、様子を見に行くと、木の下に生えてるキノコを、一人でいじっていたって」
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2:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/02/07(金) 01:13:29.03 ID:XywmlDJw0
星輝子は、友達がいない。正確には、人の友達がいない。彼女の口調はどもりがちで、それを辛抱強く聞いてくれる人と、巡り会えなかったからだ。それゆえに、初めてできた友達は、いつまでも話を聞いてくれる、キノコである。キノコは決して逃げないし、余計な口も挟まない。彼女にとっては、最高の話相手となった。
輝子とキノコは、近所の公園で出会った。自分と話してくれる友達は、湿気ている木製のベンチに生えていた。最初は彼女も、キノコを友達にしようと思ったわけではない。ただちょっとした、練習みたいなものだった。人と話す練習として、キノコを人と見立ててみた。するとどうだ、キノコは思いのほか話しやすい相手だ。練習を続けるうちに、彼女はキノコこそ生涯の友であると信じてしまったのである。
3:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/02/07(金) 01:14:20.25 ID:XywmlDJw0
輝子は初めての友のことを、念入りに調べた。種類を、生態を、栽培方法を、友といるために、自分は如何がするべきかと。彼女の熱意は、友を思う一心だったと言ってもいい。その熱意が、皮肉なことに人を遠ざけるのだが。
中学生になり、輝子はキノコとの友情から自信をつけ、人との友情を育もうと試みた。結果は失敗である。彼女は人に話すことはできても、聞く能力は一切育っていなかった。当然だ、キノコは口をきかないのだから。
4:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/02/07(金) 01:15:16.84 ID:XywmlDJw0
平日は学校が終われば、家にこもってキノコの栽培に努めた。自分の部屋に栽培スペースを設け、独学で友達を増やしていく。休日は鉢植えを抱え、キノコと共に散歩などをして過ごした。そんな日々が経過し、キノコを親友と称するようになった頃、彼女に声をかける者がいた。
「き、君、いつからいたんだ?」
5:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/02/07(金) 01:15:56.06 ID:XywmlDJw0
男は胸ポケットから小さな紙を取り出し、輝子に差し出す。輝子は鉢植えを支えたまま、それを片手で受け取り、紙面を読んだ。そこには、男の名前と身分が明かされていた。
「そこに書いてある通り、俺はアイドルのプロデューサー兼スカウトをしている。君、アイドルに興味はないか」
6:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/02/07(金) 01:16:49.23 ID:XywmlDJw0
アイドルになってから数週間、輝子はレッスンに打ち込む日々が続いた。そしてある日の夜、彼女は夢を見た。
夢の中で、輝子は自分が見慣れない姿をしていることに気づいた。普段着の裾の長いシャツでもなく、レッスン用のスポーツウェアでもない。普段の自分とは似ても似つかない、攻撃的な格好に、派手なメイク、そんな自分が大きな舞台に立っていた。舞台の前には、ペンライトを持った多くの人影が蠢き、声をあげている。その歓声の先にいるのは、叫び声をあげる自分で、その光景はまるで、アイドルのようだった。
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