過去ログ - 京子「あかりと磁石」
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2:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:15:47.82 ID:I629TTwQo

 小さいころの私はどちらかと言えば家のそとで遊ぶのが得意じゃなかったけれど、
 それでも、この砂鉄集めだけは気に入っていた。
 公園の砂場や校庭の砂、河原なんかを見ると、あそこからどれだけの黒いものが採れるだろうとワクワクした。
 運動が得意じゃなかった私には、砂鉄のズッシリ詰まった重いガラス瓶は誇りだった。
以下略



3:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:17:24.35 ID:I629TTwQo

 私といっしょに、一番熱心に砂鉄集めをしてくれたのはあかりだ。
 あかりは私みたいに運動が苦手なわけでもないし、結衣といっしょに駆け回るのも好きだった。
 それでもあかりは根気よく付き合ってくれた。
 あかりには砂鉄集めの本質のようなものが見えていた。
以下略



4:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:17:53.43 ID:I629TTwQo

 どうしてあかりの磁石がここにあるのだろう。
 間違えて持ってきてしまったのか、借りたまま返してなかったのかもしれない。
 砂鉄集めをしていたのはもう何年も前のことだから、それからずっとあかりの磁石は私の部屋にあったことになる。
 ふたつの磁石をもてあそんでくっつけたり離したりしながら、なんだか無性に懐かしくなった。
以下略



5:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:18:24.59 ID:I629TTwQo

「うん、子どものころ集めてたやつ」

「今も子どもでしょ」

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6:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:19:01.00 ID:I629TTwQo

 母親のそっけない言い方に私は傷ついた。
 だけどしかたない。
 私が自分で捨てたのだ。言われてみれば、そんな記憶がある。
 きっと幼い私は、ある時点で「砂鉄を集めるひと」なんかにはなれないと気づいたのだろう。
以下略



7:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:20:02.20 ID:I629TTwQo

 勝手な話だけど、私は罪悪感でいっぱいになった。
 手に握ったままのふたつの磁石がズシリと重くなった。
 小さいころの、あの河原に座って砂鉄を集めていた私が、私の手をひっぱっているようだった。
 今、後ろを振り返ったら、あのころの私とあかりは、どんな顔をして今の私を見ているのだろう。
以下略



8:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:20:44.51 ID:I629TTwQo

 部屋に取って返して、出かける準備をはじめる。
 リュックサックにさっきの磁石と、必要な道具を詰め込む。
 財布もある。方位磁石もある。携帯も、家の鍵も持った。

以下略



9:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:21:31.99 ID:I629TTwQo

 あかりと結衣と私。
 私たち三人が出会ったのは、それぞれの親が昔から友達だったからだ。
 だから私たちの関係は、親たちには小さいころからほとんどすべて知られている。

以下略



10:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:22:06.81 ID:I629TTwQo

 それからもう一つ定番のエピソードがあって、それはさらにもう少し小さいころ、家族で買い物に行ったときの迷子の話だ。

 ひとりはぐれてしまった私は、「あかりちゃーん」と泣きわめいたという。

以下略



11:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:22:53.47 ID:I629TTwQo

 だけど変わらないものなんてない。
 なにもかもどんどん進んで、新しくなっていく。
 私たちはどんどん大きくなって、今も成長していて、これからも違う私たちになっていく。
 大人はそれを知らない。
以下略



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