過去ログ - モバP「見えた今に絶えぬ未来を」
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16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 23:06:01.88 ID:dbLyof+Po
体内から沸騰し噴出していたはずの血液が何事もなかったかのように沈静化し、動転していた意識が元の鞘に収まってゆく。
一気に周りが見え始め、今の事態について再び考察し始めた。
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 23:07:55.82 ID:dbLyof+Po
*
ビルを丸々一つ全て借りて賄っている我が事務所は、全ての階にアイドルや俺たちのための設備が置かれている。
その内千秋が述べた部屋は四階でも余り使われない一番奥のレッスンルームであった。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 23:09:41.19 ID:dbLyof+Po
「全く……心臓が止まるかと思ったぞ」
「あ、あはは……すみません」
ちり、とペットボトルのラベルを鳴らしつつ翠は苦笑した。
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 23:11:09.97 ID:dbLyof+Po
「頑張ろうと思って、少し練習したくなって……それで疲れてしまって、つい」
こちらから声をかけようかと思っていたある時、翠が迷っていた口を開いた。
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 23:12:59.38 ID:dbLyof+Po
――あれは何だろう?
どうして返事をしようか、と彼女から視線を外すと、ふと翠の膝元に何か小さなノートが落ちていることに気づく。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 23:14:56.51 ID:dbLyof+Po
パサ。
乾いた床にノートの背が当たり、表面が滑り、擦れ、少し甲高い音が響く。
あまりに強い勢いで俺の手に飛びかかったせいで、翠のノートは俺の方に飛んできてしまう。
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 23:16:39.41 ID:dbLyof+Po
――ハッとして顔を上げると、翠が困惑した顔で手を意中無く伸ばしながら俺を見ていた。
人のノートを偶然とは言え見てしまったことを謝罪しようと最初は思ったが、それ以上に記された文字に意識が全て注ぎ込まれてしまう。
23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 23:18:59.97 ID:dbLyof+Po
「――誰がこんなに練習しろと言った! 俺か!? それともトレーナー誰かか!?」
「っ!?」
レッスンルームは防音性が高くなるように設計されており、俺の声、それも普段では絶対に出さないであろう窓を破るような声がいたるところに反響した。
24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 23:20:18.58 ID:dbLyof+Po
「教えてくれ、翠……どうして全部一人でやりきろうとする。翠の何がそうさせるんだ?」
いつまでも怒鳴る訳にもいかず、何より叫んでいて気持ちが一周回って少し落ち着いてしまったのでトーンを先程とは一転して落とすと、こちらから目を逸らした翠に対して静かに語りかける。
いきなり豹変する俺の声色に、翠は一層動揺しているように思えた。
25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 23:21:33.81 ID:dbLyof+Po
――すすり泣く声。
この部屋には俺と翠しかおらず、そして俺は泣いてなどいないのだから、必然的に声の持ち主は一人に絞られる。
26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 23:24:22.90 ID:dbLyof+Po
――ぎゅ。
そんな音が聞こえる程、俺の腕の力は強かったように思う。
「……翠が頑張らない訳、ないよな」
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