2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/04/25(金) 19:45:11.35 ID:XsXwgu560
ボクは二宮飛鳥と言う名前をしている。
年齢は14で、誕生日は二月三日の水瓶座、血液型はB型。
言うまでもなく、ボクは人間で、なので一般的な14歳の少女の例に漏れず、ボクは中学生だ。社会という大きな括りの中で、ボクは与えられた通りに、与えられた道を進んでいる。
目下、授業中である。
眠たくなる教師の声を流しながら、ボクは窓の外を見た。いつも通りの光景がそこにある。
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2014/04/25(金) 19:47:17.98 ID:XsXwgu560
そもそも、幸運がついていたのだとしたならば、こんなに悲しい思いは抱かずに済んだはずなのだ。
「おい二宮、具合でも悪いのか?」
かけられた声にハッとして、声の主である国語教師を見る。どうにも叱られると思っていたのに、相手は心配気にこちらを覗きこんでいた。これはいったいどうしたことだろう。
とりあえず、教師に対する言葉遣いにて、当たり障りなく事を済ますとしよう。
「大丈夫です、ぼぅっとしていて。なんでもないです」
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2014/04/25(金) 19:51:56.62 ID:XsXwgu560
ボクは少しだけ普通じゃない。
――なんて言い方をすると、ちょっと痛々しいかな、けれどボクがボクを言い表すとき、なによりも真っ先に口を吐くのはきっとこの言葉で間違いないんだから、仕方ない。
アイドル――偶像。それがボクの一面。日常を生きるボクからする、非日常的なボク。自慢じゃないけれどボクは、新人アイドルという括りの中ではそこそこ人気のあるアイドルをやらせてもらっている。
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2014/04/25(金) 19:54:17.86 ID:XsXwgu560
「で、どうしたんだ、まだ昼前だってのに。今日はオフだったよな? 学校は?」
「学校は……午前中で終わりだったんだ」
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/04/25(金) 20:04:33.20 ID:XsXwgu560
六面壁の立方体、そこに二人きりとなってしまうと、逃げ場はない。
「はぁ……キミには敵わないな。ああ、いいよ、白状するさ。ボクは今日学校を抜け出してきたんだ。授業中に少しいろいろあってね、気がついたら――」
「事務所の前で膝抱えてうずくまってたと?」
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/04/25(金) 20:11:07.56 ID:XsXwgu560
「いやさ、ほら、普段の良くわからない言動よりも、よりわけわからないだろう? じゃあこの場合飛鳥らしいと言っていいのかと疑問がな」
「……そこはかとなく馬鹿にしているだろう?」
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/04/25(金) 20:12:43.09 ID:XsXwgu560
「酷い目にあった」
「キミが酷いことを言うからだ、自業自得、因果覿面、因果はめぐる糸車ってやつさ」
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2014/04/25(金) 20:18:56.22 ID:vGgGruh50
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/04/25(金) 20:36:26.19 ID:XsXwgu560
「はぁ、それで、実際どうしたんだよ」
心底心配したような、そんな優しい声色だった。先ほどまでのおちゃらけた雰囲気がなくなって、唐突に押されたプロデューサーの『スイッチ』、いつもの、と言ってしまうには頻度は低く、けれど極稀にと言ってしまうには少し違う気がするほどのバランスで押されるそのスイッチが入った彼は、ボクにとってすると少しばかり苦手だったりする。普段飄々としていて、ふざけた様子が多くうかがえる癖に、ここぞというときに限って彼はあまりに的確にボクの心に入り込んでくる、そして、何かしらを『奪って』行くのだ。
悩みであったり、怒りであったり、寂しさであったり、何かしらを。
毎回かならず、後に残っているのはボクにとって都合がいい、喜ばしい結果だけれど、思春期真っ盛りのボクからすると、まるで心を毟り取られる様な不安感があるのも事実なのである、プロデューサーが信頼に値する相手であるからいいものの、たまらない話であることには変わりない。
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/04/25(金) 20:37:17.61 ID:XsXwgu560
小さなテーブルを挟んでソファに座るボク達の間には、以降何とも言えない重い空気がのしかかった。
きゅっと口を噤んで顔を伏すボクと、何も言わずにそんなボクを見つめているプロデューサー。
事務所の壁に立てかけられた時計の秒針がこつこつと鳴るたび、まるで固く閉ざした口をノックでもされているかのような錯覚に襲われて、言い寄らぬプレッシャーに折れ、ボクは結局、我慢ならずに言葉を紡いだ。
「な、なんでもないんだ……ほんとに。ほら、ボクは『痛いヤツ』だから、少し不良ぶって授業を抜け出したくなったんだよ、これもボクの世界へのささやかな抵抗さ」
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/04/25(金) 20:41:58.25 ID:XsXwgu560
「嘘だな」
そして故に、それはあまりに弱々しく、意味を持たなかったらしい。
「またそれか、ボクは信用されてないのかな」
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