11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:16:12.62 ID:3xKP/jN8o
「そんなにボクがおかしいですか」
声を出していた自分の間抜けさを呪いながら、そんな様子はおくびにも出さず幸子に目を向ける。
「もうお茶入れたんだ、早かったね」
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:17:33.10 ID:3xKP/jN8o
既に何度目かわからない沈黙の訪れに、TVの音響が空虚に響く。
番組はクライマックスを迎え、さあどうなる、というところでいつもの山場CM。
妙に明るい15秒スポットを写す中、たまたま自分の出たものも混じっていた。
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:18:27.91 ID:3xKP/jN8o
「双葉杏。アイドル1やる気のないアイドル」
「人受けのいいように振る舞うわけでもなく、でも、嫌われるわけでもなくて。……むしろ人気の要因です」
「……あなたには、媚びた笑いを振りまいて自意識過剰と笑われるボクが、さぞ滑稽に映ってるんでしょうね」
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:21:14.47 ID:3xKP/jN8o
こちらを責めながら、幸子は笑っていた。
いつものテレビで見る余裕ぶった笑いとは違う、歪んだ笑み。
劣等感と優越感をない交ぜにした、泣いているような笑顔。
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:25:04.97 ID:3xKP/jN8o
「そりゃあわかんないよ。だって杏とキミは他人だもんね」
「でもキミに分からないこと、杏は知ってるんだ」
「……私さ、体小さいよね。まあ今はいろんな意味でネタになってるし、それで楽もできてるけど」
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:27:53.62 ID:3xKP/jN8o
「でもそれがあっても私はこんなところで燻ってる
頑張って、頑張ってさ。頭はクリア、体も動く。
いける、やれる。……今度は、違う。そこでいつも倒れるの」
「やになるよ。……少なくとも私はやになった。やってられるかーってなった
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:29:34.81 ID:3xKP/jN8o
だが。
「……だから、どうしたんですか」
努力を重ね、頂に手を掛けて。その上で才能の壁に打ちのめされた……、そしてなお頂に憧れ続けた少女には、それを認められない。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:32:03.06 ID:3xKP/jN8o
言い合って、我をぶつけられ、ぶつけかえして腑に落ちた。
何となく苦手、何となくそりが合わない、ただ、何となく嫌い。
答えがわかってしまえば、なんと言うことはない。
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:33:28.68 ID:3xKP/jN8o
表に車の止まる音がした。
きっと、ちひろが迎えに来たのだろう。
「……ボクには、あなたが甘えてるようにしか見えません」
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:35:02.43 ID:3xKP/jN8o
……人は自分の持っているものの価値を見損ない、相手の持つものの価値を見損なう。
それぞれを小さく、そして大きく、相手をこそ恵まれていると。
だから神ならぬ身の人である限り、人は決してわかり合えない。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:35:41.61 ID:3xKP/jN8o
「本気、出してみようかな」
一言だけつぶやく。
自分も騙せないような薄っぺらな声音。
33Res/17.26 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。