1: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:23:53.91 ID:V2I0Qyiz0
歓声に沸く歓声。踊る熱気。
五万人の観客を収容するこの某ホールでは、午後七時の鐘を待ちわびる人々で溢れ返っていた。
外気は28度を超える熱帯夜。
当然のように冷房が付けられているものの、皆の熱気は静まるところを知らず、
その体感温度は真昼のそれと変わらない程に高まってる。
ビールを売り歩くお姉さんは、額に汗して右へ左へ大忙し。
白いコシュチュームが肌に張り付き、水色の下着が透けているのを気にする余裕も無さそうだ。
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:24:37.92 ID:V2I0Qyiz0
「大変長らくお待たせしました! これより、選手入場です!」
ホールの中央、四方50メートルの巨大なリングの真ん中で、
上下ピンクのスーツに身を包んだ派手な男が天に向かってマイクを掲げた。
3: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:25:32.03 ID:V2I0Qyiz0
「青コーナー。月並工業株式会社、技術制作部、半導体研究科、一般社員。
サトウゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウ
ケンタァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアア!!!!!」
4: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:26:28.51 ID:V2I0Qyiz0
佐藤は強張った面持ちで花道の真ん中を闊歩した。
湧き立つ歓声や焚きつけられるフラッシュを振り払うように、
前方のリングを真っ直ぐに見据えて一歩一歩足を進める。
5: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:27:17.74 ID:V2I0Qyiz0
「赤コーナー。丸々製薬株式会社、宣伝部、部長。
ヤマダァァァァァァァァァァアアアアアア
タロウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥォォォォォォォォォオオオオオオオオ!!!!!」
6: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:28:00.76 ID:V2I0Qyiz0
山田は花道の観客に礼を返しながら、優雅な足取りでリングを目指す。
頭を下げる度に、上昇気流となった熱気が彼の頭部を優しく撫でる。
頭頂に横たわった幾ばくかの髪の毛が、釣られるようにフワリと空へたなびいた。
7: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:28:44.06 ID:V2I0Qyiz0
「両者、リングの中央へ」
アナウンスに導かれ、王者の山田、そして挑戦者の佐藤が互いに手の届く距離まで歩を進めた。
そして同時に懐へ手を伸ばす。
8: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:29:31.18 ID:V2I0Qyiz0
名刺交換。
それは単なる社交辞令ではなく、戦いの前における神聖な儀式とされている。
古くは戦国時代、武将が戦場で互いに名乗りを上げた事が由来とされており、
9: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:30:37.37 ID:V2I0Qyiz0
そして現代においてビジネスとは戦いであり、戦いもまたビジネスである。
王者、山田を例にしよう。
彼は丸々製薬の宣伝部長としてリングに立っている。
10: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:31:39.84 ID:V2I0Qyiz0
時に、皆さんは『バーコードバトラー』をご存じだろうか?
199X年、EP社から発売された小さな遊戯機械である。
簡単に説明するなら、
11: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:32:30.89 ID:V2I0Qyiz0
そして、時は20XX年。
EP社は、ついに究極のバーコードバトラーを世に送り出した。
『データを読み取らせて、その情報からキャラクターを生成して戦う』
12: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:33:30.90 ID:V2I0Qyiz0
どうしてこうなった。
一説によれば、ノイローゼになったEP社の商品開発者が
半ばヤケッパチで企画を通したのが発端とされるが定かではない。
13: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:34:23.90 ID:V2I0Qyiz0
名刺交換も終わり、王者と挑戦者の両名は、お互いのコーナーへと踵を返す。
レフリーの合図と同時に、両名は腕に取り付けた小さな機械を自らの頭頂に押し当てた。
14: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:35:04.12 ID:V2I0Qyiz0
先に動きがあったのは挑戦者だった。
彼の右隣に光の渦が発生し、その渦はだんだん太く、だんだん長く、
グルグルと円を描くようにその存在を増していった。
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/06/08(日) 13:35:44.00 ID:9oY5eE9AO
予想通りと予想外が混在していて面白い。
期待
16: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:35:52.63 ID:V2I0Qyiz0
「さあ、まずはこの挑戦者の毛神をどう見ますか? 解説の久保さん」
「はい。まず彼はですね、一見すると七三分けに見えますが、
実は頭のてっぺんがハゲているんですね。
17: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:36:51.20 ID:V2I0Qyiz0
さて、遅れて動きがあったのは王者の方。
彼の右側には、バリバリと音を鳴らしながら稲妻の柱が落ち始める。
稲妻は次第に数を増し、会場全体が光に包まれたと思った次の瞬間には
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/06/08(日) 13:37:56.30 ID:UktBCt4Q0
デシケィドの顔読み取らせてみようぜww
19: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:38:02.10 ID:V2I0Qyiz0
「さあ久保さん。人型の毛神対、蛇型の毛神という構図になりましたが、
王者にはどのような戦いを期待するでしょうか?」
「いえ、王者に関しては何も言う事はありません。
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/06/08(日) 13:38:38.75 ID:UktBCt4Q0
ディケイドやった
デシケィドてなんやねん
21: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/08(日) 13:38:53.55 ID:V2I0Qyiz0
リングの中央で二体の毛神が対峙する。
ケツァルコアトルは、子供なら丸飲みできそうな程の大口を開き、
シューシューと噴気音を立て始めた。
23Res/13.41 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。