869: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:28:35.39 ID:g/PD0yL+o
ガタゴトと馬車が揺れる。もう何日もこうして移動しているけれど、一昨日ようやく中央高地を越えた。
870: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:29:19.80 ID:g/PD0yL+o
「まぁ、もう少しの辛抱だから頑張って」
荷台でシュンしてしまった二人に、大尉さんが申し訳なさそうに苦笑いを返す。
871: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:29:58.05 ID:g/PD0yL+o
そんな話をしている間にパカポコと蹄の音をさせて、班長さんが荷台の後ろに回って中を覗き込んでいた。
「その女性が、例の…?」
872: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:30:40.67 ID:g/PD0yL+o
「まぁまぁ、十六姉ちゃん、そうカッカするなって」
「だけどさ!」
873: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:31:30.51 ID:g/PD0yL+o
私達は親衛隊の騎馬隊三十騎に警護されてようやく中央都市へたどり着いた。
874: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:31:59.09 ID:g/PD0yL+o
一瞬、胸が詰まるような緊張感が漂う。そんな中で口を開いたのは、誰でもない、お姉さんだった。
「よう、久しぶりだな」
875: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:32:54.07 ID:g/PD0yL+o
「お、お姉さん!ちょっと待ってよ!」
「お姉ちゃん、ダメだよ」
876: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:33:30.22 ID:g/PD0yL+o
「ひ、姫君…?」
勇者様が不思議そうにそう尋ねる。
877: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:34:31.46 ID:g/PD0yL+o
「…それも、あの子が気付いたの?」
勇者様は、兵長さんの質問に応えるよりも先に、そう聞き返しながら私を見やった。
878: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:35:10.76 ID:g/PD0yL+o
「そもそも、“円環の理”を真に理解している者がいない。それは、この一年で少し調べてみただけでも分かった。
まぁ、『管理者』の末裔達はどうかは分からなかったけど、仮に知っていたところで、この大陸にはもう、白玉石がないんだ」
879: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:35:36.18 ID:g/PD0yL+o
あの日、私達を騙して“生け贄のヤギ”を引き受けたときのような、悲しい笑みもない。嘘を言わなきゃいけない理由も思い当たらないし、疑うような部分もない。
もし嘘だとしても私達にそれを確かめる方法はないけれど…でも、私は勇者様の言葉を信じられると、そう思った。
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