2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:16:03.85 ID:Ha53zHbko
「恋人、いらしたんですか」
「すぐ別れてしまったけどね。いらしたんですよ?」
あいさんはくつくつと笑った。僕は乾いた笑いをなんとか絞り出した。
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2014/10/06(月) 21:17:29.87 ID:Ha53zHbko
「どうしたんだい。ぼんやりしているようだが」
「あ……すみません」
妙な気分だ。今まで鳴っていた音が、急に途切れてしまったみたいに。
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:18:35.48 ID:Ha53zHbko
「今は?」
「今? さあ。目の前に来られて、好きだと囁かれたら……まあ、断るね」
「そうですか」
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:19:34.21 ID:Ha53zHbko
――――
あいさんは今をときめくアイドルだ。と言っても一般的なアイドル像とは少し違う。
端麗な容姿から、写真や映像の仕事が多い。
ライブもしたことはあるが数えるくらいで、他のアイドルと比べればかなり少ない。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:20:49.69 ID:Ha53zHbko
あいさんのことが好きなのか、と言われたら、僕は否定も肯定もしない。
なんというか、あいさんが他人を好きになるというのがいまいち信じられなかった。
変化を感じないほどに緩やかな毎日を僕は過ごしていた。
小さな引っかかりが、その緩やかさに微かな傷をつけてしまった。
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:22:16.08 ID:Ha53zHbko
「疲れてるわけじゃないです」
「なら、いいんだが」
あいさんはふっと一呼吸したあと、指を立ててタバコのジェスチャーをした。
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:23:08.42 ID:Ha53zHbko
「……あいさんの恋人は、タバコが嫌いだったんでしょう」
あいさんは急になんだい、と微笑を少し苦く歪めた。
「嫌いだったみたいだ。それに、彼は真面目な人だったしね……」
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:24:46.53 ID:Ha53zHbko
あいさんは鼻で笑った。自嘲的な笑みだった。
そして、今までに彼女が見せた笑みと全く同じだということを僕は悟った。
「君は……どう思う?」
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:27:31.01 ID:Ha53zHbko
僕はこの頃、あいさんのことをよく考える。
彼女は異様に冷めていて、誰のことも好きじゃないみたいだった。
僕はなぜだか、彼女に惹かれ始めていた。以前とは違う惹かれ方だ。
「好きなんだけどな」
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:28:28.18 ID:Ha53zHbko
撮影を終えたあと、二人でファミレスに立ち寄った。
正午をすでに二時間も回ったところで、店は空いていた。
「例えば、私がお子様ランチを注文したら、君は驚くだろう」
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:29:43.74 ID:Ha53zHbko
「どうせ、たらこスパだろ」
「お子様ランチでも頼んでみましょうか?」
「頼めるものなら、是非に」
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