24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/29(土) 11:59:38.68 ID:L4/wSLr5o
●梅木音葉
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2014/11/29(土) 12:00:15.94 ID:L4/wSLr5o
あの人の声は、色が、感情がよく見える。
初めて交わした言葉は、緊張の赤と、うちに隠れた橙色の熱意が混ざった花火。
私が仕事を選り好みして、たしなめられたときは、警告色の鋭い黄色。
失敗を慰めてくれた時は、いつまでも包まれていたいと思ってしまう森の緑。
26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/29(土) 12:00:55.89 ID:L4/wSLr5o
あの人に、初めてその紫を見せてもらったのは、不慣れな水着での仕事の日。
前は肌を出す仕事にとても抵抗があったけれど、あの人が真剣に考えた末の提案だ、と分かったし、
他の子たちに負けていられない、なんて煽られた面もあった。
それで、幸いなことに仕事が大成功を収めたのだけど、あの人はあまり褒めてくれなかった。
27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/29(土) 12:01:33.16 ID:L4/wSLr5o
「ごめんね、音葉ちゃん。連絡が遅れちゃって。
プロデューサーさん、ちょっと他の子の事故処理にかかってて、しばらく戻れなさそうなの」
私が、打ち合わせのために事務所に来てあの人をたずねると、ちひろさんが応対してくれた。
28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/29(土) 12:02:07.26 ID:L4/wSLr5o
実は私のプレイヤーに、あの人の声だけが入った音声ファイルがある。
ICレコーダーでこっそり録ってしまったもの。凝った編集はしていない。
あの人の声以外の音をただオミットしただけだから、
29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/29(土) 12:02:49.52 ID:L4/wSLr5o
ヘッドホンであの人の声を聞くと、すべてが私への囁きのように思える。
声だけじゃない。吐息までが、耳を撫でる。ちりちりとかすかに光る。
耳に一番近い頭から、紫の煙に包まれていく。
30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/29(土) 12:03:23.41 ID:L4/wSLr5o
目蓋の裏に描いていたはずの、あの人の姿さえ、紫に包まれて見えなくなった。
私は、急に心細くなる。
プロデューサーさん。早く戻ってきて、私の手を握ってくれないかしら。
31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/29(土) 12:04:15.33 ID:L4/wSLr5o
「おーい、音葉さーん、おーとーはーさーんっ」
いきなり意識が戻ると、目の前には李衣菜さんの顔が見えた。
32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/29(土) 12:04:50.47 ID:L4/wSLr5o
●江上椿
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33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/29(土) 12:05:36.65 ID:L4/wSLr5o
初めて撮影された後の、首筋や顔に残っていた高揚感は、
不慣れなことへの緊張か、レフ板の光を浴び続けた火照りだ、と思っていました。
いつもは撮影する側だったから……。
34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/29(土) 12:06:09.95 ID:L4/wSLr5o
ある日、私の愛機でプロデューサーさんに私のポートレートを取ってもらった時。
あの人の手に抱えられたモニターに、はにかんだ私の姿を見た瞬間、
私の内心までプロデューサーさんの手の中に持って行かれた錯覚がしました。
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