12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 06:48:51.93 ID:DL0z8tZuo
「傘、ありがとうございました」
鞄から折り畳み傘を出して彼に手渡す。彼の横で少女がキョロキョロと私を見ていた。
それから、彼女は彼の方を見上げて、訊いた。
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 06:50:03.92 ID:DL0z8tZuo
「工藤忍をどうぞよろしく」
「ねぇ、アタシにも心の準備というものが……」
「いいかげん慣れてもらわないと、ロクに紹介もできないや」
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 06:51:13.13 ID:DL0z8tZuo
――――
夕食の席で母に、土曜日に東京へ行くことを伝えた。
「お仕事?」
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 06:52:08.34 ID:DL0z8tZuo
土曜日の朝、起きると私はさっさと着替えて、家を出た。
この息苦しさとも今日限り別れられるかもしれない。
新幹線での二時間は退屈だった。
母からミュージックプレイヤーを借りてきてよかった。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 06:53:07.51 ID:DL0z8tZuo
名刺に印刷されていたプロダクションは、雑居ビルの一室に事務所を構えていた。
様々な広告看板に紛れるそれは、一見するとサラ金か英会話教室に思える。
一つ深呼吸をしてビルの階段に足をかけた。
事務所のある三階まで上っただけなのに、息が切れる。
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 06:54:23.03 ID:DL0z8tZuo
控えめに、ドアを三回叩いた。
待てど暮らせど――と言うほど時間が経ったわけではないけれど、
内からドアが開く気配はなかった。もう一度ノックをする。
静かなドアの前、深い溜息が反響した。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 06:55:12.36 ID:DL0z8tZuo
「新人の子かな」
「いや、俺ぁ知りません」
顔を見合わせる二人へ礼をして、私はポケットから名刺を取り出した。
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 06:55:40.17 ID:DL0z8tZuo
「でも、私が会った人と……」
「その会ったって人の名前は知ってる?」
もちろんと言いかけて、彼の名前を知らないことに初めて気が付いた。
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 06:56:13.13 ID:DL0z8tZuo
マドギワと呼ばれた彼は二人へ私を簡単に紹介したあと、向き直って尋ねた。
「どうしたの、佐久間さん」
「私、アイドルになりたいんです」
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 06:56:46.34 ID:DL0z8tZuo
「まあ、いいや。なにか、食べたいものはある?」
「えと、ファミレスとか」
「ハンバーグか」
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 06:57:24.74 ID:DL0z8tZuo
彼と入ったファミレスは昼時ということもあって混んでいた。
待たされている間、空腹が意識の縁までぷかりと浮かんできた。
気まずくないくらいの沈黙の時間が過ぎ、それから二人がけの席に案内された。
私はハンバーグを、彼はたらこスパを注文した。
142Res/83.83 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。