21: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:57:59.51 ID:RN7L+xaq0
チンドン、チンドン、チンドンドン……。
ちんどん屋の鳴り物が、耳鳴りのように響きます。
妾はモウ、恐ろしいやら可笑しいやら……。
22: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 02:00:00.13 ID:RN7L+xaq0
「美味いなァ。アア、美味い美味い」
チイちゃんの口が、傷にそって裂けました。
桃色の肉の中に、ナニヤラ白い物が見えました。
見間違うハズもありません……歯です……。
23: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 02:02:32.73 ID:RN7L+xaq0
がちがちという音が聞こえました。
妾の歯の根が合わずに、耳障りな音を出しているのです。
もう、チイちゃんはチイちゃんではありませんでした。
ちんどん屋は何処か遠くへ行ったようです。
物音一つ聞こえない、シンと静まり返った中、妾はチイちゃんと二人きりでした。
24: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 02:05:25.62 ID:RN7L+xaq0
よくよく見ますと、チイちゃんのくわえている飴は、ドス黒い血のような色をしておりました。
もしかしたら本当に、人の血を寄せ集めて固めたものだったのかもしれません。
チイちゃんはその血の塊のようなモノを、スッカリ胃袋へ収めてしまいました。
25: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 02:11:48.94 ID:RN7L+xaq0
「アア、美味かったァ」
だらりと涎が落ちました。血のような赤い液体も落ちました。
ニッコリと笑うチイちゃんを、妾はモウ、直視する事が出来ません。
なんともおぞましく、恐ろしく、怖かったからです。
26: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 02:15:17.86 ID:RN7L+xaq0
「アア。本当に美味しい飴だったなァ」
「エエ……エエ、トッテモ……」
「しかし、まァ、ナニ……飴の一つや二つでは、この空腹は満たせないと思わないかね」
27: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 02:18:37.42 ID:RN7L+xaq0
「そうですか。妾は……モウ、お腹はイッパイで……」
「そう思うかい?」
「エッ……エエ、ハァ……」
28: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 02:21:46.27 ID:RN7L+xaq0
「……食べれば良いかと、思いますが……もっと、大きなモノを……」
29: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 02:23:10.80 ID:RN7L+xaq0
振り返ると、目の前に歯がありました。
生暖かい息が、顔に当たりました。
30: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 02:24:10.53 ID:RN7L+xaq0
叫び声があがりました。
妾は尻もちをつき、その拍子に歯から逃げる事が出来ました。
がちんと鼻先で口が閉じます。
その時になってヤット、叫び声が自分の口から出ている事に気付きました。
31: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 02:25:46.65 ID:RN7L+xaq0
妾はモウ無我夢中で、暗い路地を走り出しました。
チイちゃんの細く長い指が、妾の髪を絡め取ります。
しかし妾は頭を振ると、髪の毛を根本から千切ってしまいました。
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