11: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:34:47.40 ID:RN7L+xaq0
「アハハハ……アハアハアハ……そう困った顔をするんじゃないよ。ナニ、祭りなどが無くとも、屋台の一つや二つはあるもんさね」
「ハア……そのようなものなのですか」
「そうさ。気の無い返事をしないでおくれよ。でっかいのはよほど、お遊びには疎いカタブツと見える」
12: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:36:45.01 ID:RN7L+xaq0
そのうちにチイちゃんは、ある一つの店の前で止まりました。
くたびれた暖簾が掛かった屋台です。
黄色く色が変わった暖簾なのですが、ボンヤリと灯った提灯の明かりを受けて、なんとも幻想的な雰囲気を醸し出しております。
まるで此の場所、此の空間が、此の世のモノでは無いかのようでした。
13: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:39:23.29 ID:RN7L+xaq0
暖簾の隙間から屋台を覗くと、色とりどりの鼈甲飴が見えました。
青、赤、緑、黄色にピンク……。
形だって様々で、動物の形を模した物や乗り物の形をした物、ハート、星形、ナニヤラ分からない形の物まで……。
驚くくらい様々な鼈甲飴が並んでいるのです。
14: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:41:44.44 ID:RN7L+xaq0
「妾、あたし……このような店は、何分初めての事ですので……」
「ああ」
「ここなのですね」
15: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:43:31.69 ID:RN7L+xaq0
チンドン、チンドン、チンドンドン……。
遠くでちんどん屋の鳴り物が聞こえます。
妾たちは早速、屋台の前で鼈甲飴を食べる事にしました。
16: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:46:51.25 ID:RN7L+xaq0
妾は恐る恐る、舌先で飴を舐めあげました。
すると、どうでしょう。複雑な甘さと濃厚な香りが、口イッパイに広がったのです。
その味の凄まじさ……甘さ……美味しさとイッタラ……。
思い切って頬張ると、複雑な味が紐解かれるように、一つ一つの形となって、舌の上を滑ります。
17: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:49:02.42 ID:RN7L+xaq0
妾はモウ夢中になって、鼈甲飴を頬張りました。
飴はすぐに甘い露となり、胃袋へ溶け去り、後に残ったのは残り香だけです。
妾は卑しくも飴が包まれていた新聞紙を舐めあげました。
そして、先の行動がドウにも淑女が行うべきものでは無い事に気付き、顔を赤らめました。
チイちゃんは、まだ飴を頬張っている所です。
18: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:52:19.32 ID:RN7L+xaq0
その時です。
なんとも可笑しな事が起こったのは……。
19: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:53:28.06 ID:RN7L+xaq0
鼈甲飴を舐めるチイちゃんの、可愛らしい頬に、ツウと朱い線が走ったのです。
アレ、と思う間もありません。
線はドンドン深くなり、桃色の肉が中から見えました。
まるで鋭利な刃物で切り裂かれてしまったかのようです。
タラリ、と真っ赤な液体が流れました。
20: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:55:29.87 ID:RN7L+xaq0
「美味いなァ。アア、美味い美味い」
傷はドンドン深くなり、口の端まで達しました。
しかし、チイちゃんは何処吹く風といった顔で、飴を舐めるのをやめません。
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