過去ログ - 半魔「どうして僕は、人間じゃないのかな」
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1: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 20:42:55.81 ID:G7/I6QrUo
半魔「……ふう」

草むしりを一時中断し、彼は腰を下ろした。

彼が草むしりを命じられた村長宅の庭は、村の家の中では一番広いが、それでも街の上流階級の邸宅に比べれば大したことはない。

とはいえ、まだ13歳になったばかりの彼には、この庭全ての雑草を抜くという作業は、それなりの重労働ではあった。


彼が、普通の子供よりも体力があるとしても。


鈍い痛みを感じる掌を、開けたり握ったりしてほぐす。

人間よりも硬く鋭い爪(――苦労して切っても、またすぐ伸びてくるのだ――)を見るのを彼は嫌っていたので、その間ずっと上を向き、空の雲を眺めていた。


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2: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 20:48:18.99 ID:G7/I6QrUo
王国北部の小さなこの村で、人間の母親と魔族の父親との間に彼は産まれた。

元々両親は村から離れた街に住んでいたのだが、魔族排斥を掲げる過激派組織に目をつけられ、彼の父は身重の妻を抱えて、この村まで逃げてきた。

当然、この村でも歓迎はされなかったが、身重の人間を追い返すことも出来ず、渋々ながら受け入れられた。
以下略



3: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 20:51:21.61 ID:G7/I6QrUo
10人ほどの集団の奇襲を受けた彼の父は、それでも互角に渡り合っていたが、過激派の一人が母を人質にとり、父に抵抗を止めるよう要求したそうだ。

父は、その要求を呑んで殺された。

母親も足に大きな火傷を負い、今なお歩くのにも苦労する生活を強いられているが、その傷を与えた魔法は彼女を狙ったものではなく、最初の奇襲の際の流れ弾だったらしい。
以下略



4: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 20:54:58.29 ID:G7/I6QrUo
村長「半魔」

後ろから声を掛けられ、彼は振り向く。

屋敷の入り口に村長が立っていた。半魔も慌てて立ち上がり向き直った。
以下略



5: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 20:56:36.82 ID:G7/I6QrUo
村長宅の庭を出て、畦道を走る。

農作業をする村人達とすれ違うが、誰も半魔を見ようともしないし、彼もまた無言で走り続けた。

この村では、彼ら母子は基本的にいない者のように扱われる。
以下略



6: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 20:57:52.38 ID:G7/I6QrUo
半魔「……」


前方に人影を見て、彼は足を止めた。

以下略



7: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 21:03:27.13 ID:G7/I6QrUo
少年A「おいこら何とか言ってみろよ。親を馬鹿にされても怒らねえなんて、てめぇそれでも男か? ああ?」

少年A「化け物には血が通ってねえから、親のために怒ることも出来ないのかよ!」


以下略



8: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 21:06:16.97 ID:G7/I6QrUo
少年B「いっぱい魔族を殺したから、もう嫌になっちまったのかな」

少年A「そりゃねえよ」


以下略



9: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 21:09:05.81 ID:G7/I6QrUo
ぴたり、と、飽きもせず半魔を蹴っていた足が止まった。

彼は顔を上げる。

凍り付いたような表情の少年が二人と、手で顔を覆い天を仰ぐ一人の向こうに、涼しげに笑う男が立っていた。
以下略



10: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 21:11:33.74 ID:G7/I6QrUo
先生「私は体罰を用いません。それが王国の伝統ですからね」

先生「共和国軍では日常茶飯事の鉄拳制裁も、我が王国騎士団は禁じている。それはなぜか?」

先生「上の人間が、目下の者を殴りつけ屈辱を与えるなど、士道に悖る行為だからです」
以下略



11: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 21:13:21.17 ID:G7/I6QrUo
先生「とはいえ、大切な生徒を痛めつけるなど、私もしたくはない」

先生「そこで……」


以下略



12: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 21:14:44.30 ID:G7/I6QrUo
おもむろに、先生がぱちんと指を鳴らした。

と、半魔の顔に風が吹き付け、思わず目をつぶる。

次に目を開けた時には、二人の少年の姿はどこにもなかった。
以下略



13: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 21:16:46.68 ID:G7/I6QrUo
最初、半魔にはそれが何の音だか分からなかった。

ただ、上の方から聞こえることだけは判断できたので、反射的に上を向いただけだ。


以下略



14: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 21:17:31.15 ID:G7/I6QrUo
空の二人が吐き出し続ける言葉が「あ」だということを判別出来るくらいに彼らとの距離が縮まって初めて、ようやく地上の二人の心に焦りが芽生えた。


「先生……ッ!」

以下略



15: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 21:18:42.05 ID:G7/I6QrUo
先生は魔法使いだ。

それも、王国でも最高位の魔法使いらしい。

どころか、20年前の大戦で多大な戦果を挙げた英雄の一人だと半魔は母から聞かされた。
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16: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 21:20:12.90 ID:G7/I6QrUo
AとBの「無事」を確認した先生は、どこからか服を取り出して二人を着替えさせ(そして汚れた服をどこかに仕舞い込んだ)、その間に半魔を治癒すると、子供達を自宅へ先導した。

AとBはその間ずっと心ここにあらずであったが、先生の言うことには素直に従った。

授業が終わり、先生の私室へ呼ばれた二人が部屋から出てきた時には綺麗になった元の服を着ており、席に着いたままの半魔を見ないようにしながら足早に走り去っていった。
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17: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 21:22:35.75 ID:G7/I6QrUo
家に着くと、いつものように母に今日の授業内容を話して聞かせる。

母もまたいつものように穏やかな表情で頷いていたが、近年、『光の橋』という名の人間界に住む魔族を支援する団体が勢力を拡大しており、政界でも支持を広げているという話を聞くと、


以下略



18: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/13(火) 21:23:16.19 ID:G7/I6QrUo
今日はここまでです。読んでくださりありがとうございました。


19:名無しNIPPER[sage]
2015/01/13(火) 21:24:47.43 ID:zncmSiUVo
おつ
期待


20:名無しNIPPER[sage]
2015/01/13(火) 21:52:46.97 ID:lP5lBXkJO

支援団体が来るのに状況が暗転すんのか


21: ◆ogbr65IgNI[saga]
2015/01/14(水) 17:35:43.23 ID:vKjEydQ5o
――――――
――――
――

――村長宅
以下略



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