2: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:13:28.96 ID:xhFcsLfTo
手の平ほどのそれは、縦10センチ、横8センチ、奥行き3センチ。緑色で、材質はスチールらしい。
上には直径3センチの穴が空けられている。覗けば、そこは深闇に通じているように思われた。
だが現実としてそんな事があるはずもなく、穴から漂う甘い匂いが
3: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:14:16.48 ID:xhFcsLfTo
Aは唾を飲み込むと、ゆっくりと缶に手を掛けた。軽く持ち上がり、中身がガラリと音を立てる。
逆さに倒すと、Aの手には赤色の玉が音も無く落ちた。そのまま口へ入れ、隣のBへ缶を回す。
BもAと同じ事を繰り返し、そしてCへ缶を回す。
4: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:14:51.35 ID:xhFcsLfTo
そして三週目。
最初の男Aは、おもむろに缶を逆さにして一度だけ強く上下した。
白い玉が手の中に転がり込む。
5: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:15:59.20 ID:xhFcsLfTo
Aは天井に掲げた玉から手を離し、自らの口へ放り込んだ。
今撃たれる訳にはいかない。こちらにはまだ希望がある。
目をつむって玉を飲み、一秒、二秒、三秒――――。
6: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:16:42.17 ID:xhFcsLfTo
× B C D E
7: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:17:17.69 ID:xhFcsLfTo
『ハッカを引いたら死ぬ』。ルールは至ってシンプル。
彼らは『サクマドロップス』を用た死のゲームに身を投じていた。
勝てば一千万。
8: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:18:17.38 ID:xhFcsLfTo
五人にはそれぞれ莫大な借金があった。
ギャンブルに溺れた者、愛人に貢ぐだけ貢いで捨てられた者、株で取り返しのつかない失態をおかした者。
その経緯は様々だが、
9: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:19:01.03 ID:xhFcsLfTo
だがそんなある日、彼らに一獲千金のチャンスが転がり込んだ。
「高額の賞金が手に入るゲームあるんだ。どうだ、参加してみないか?」
話を持ちかけたのは黒服にサングラスといかにもな風体の男であったが、
10: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:19:48.48 ID:xhFcsLfTo
ゴトリという固い音を立て、Aの体が床に崩れた。
喉を押さえたまま目を剥き、色の無い目を天井に向けて横たわる姿は
さながら出来の悪い蝋人形である。
11: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2015/02/08(日) 20:21:40.01 ID:xhFcsLfTo
Bは缶に飛び付いた。銃口から逃れるように。
慌てて振ったせいか、彼の手には二個の玉が転がり込む。
一つ目は白、そして二つ目も――――、白。
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