過去ログ - 社長が首を括ったあとの話
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1:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 00:53:59.88 ID:Pk6xABjY0
もう何年も昔の話だ。
この話を書こうと思ったのは今日が俺にとって特別な日だからだ。

厄落としがてらここに書かせてもらう。
なぜならこれからする話は作り話だからだ。


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2:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 00:54:23.80 ID:Pk6xABjY0
当時は不況で世間は灰色だった。
正直今もそうじゃないとは言えないがな。

俺がその時働いていたのは小さなところだった。
親会社が傾けば簡単に潰れちまうようなところだ。
以下略



3:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 00:54:53.66 ID:Pk6xABjY0
もちろんそんな会社が不況に耐え切れるはずはなかった。

少しやばいなと思ったらすぐに潰れちまった。

土日を寝て過ごして迎えた月曜日。
以下略



4:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 00:55:39.06 ID:Pk6xABjY0
それに比べて社長の顔は膨れ上がって、茶色、土色、あの事務所のトタンのサビの色、そんなだった。

とにかく醜悪なそれは俺の中のかなり深いところにまで食い込んできたようで、
目の端に何かがぶら下がってるのが見えることに悩まされる日々が今後続く。

以下略



5:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 00:56:54.56 ID:Pk6xABjY0
小さな会社だったから社長とはよく話したし、昔から世話になったものだから感謝もしていた。

けれどその時は悲しみなんてものは1ミリたりとも湧かなかった。

目の前のモノへの嫌悪、明日への不安、そんな身勝手なものばかり。
以下略



6:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 00:57:30.32 ID:Pk6xABjY0
そこからいろいろとあったがよく覚えていない。

すべてはあっという間だった。

警察が代わる代わる来て同じ質問を投げかけてくる。
以下略



7:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 00:58:25.54 ID:Pk6xABjY0
これからどうするのか、仲間と幾度と無く話し合った。

同僚たちは日雇いの仕事を探すようなことを言っていた。
まだ決めていないと答えた俺も誘われたが断った。

以下略



8:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 00:58:54.08 ID:Pk6xABjY0
事件も落ち着いて地元の新聞の片隅に記事がちょこんと掲載されてこのあとは風化していくだけだった。

会社は駅に近かったからかすぐに買い手がついて更地になった。

何かを新しく建てるつもりなのだろうがどうなったかは知らない。
以下略



9:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 00:59:29.24 ID:Pk6xABjY0
その間の俺はといえば昼に起きてビールをあける。

ネットやパチンコなんかで適当に時間を潰してまた酒を飲んで寝る。

ごくたまに青くなった社長を錯視する以外は楽しい毎日だった。
以下略



10:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 01:00:03.38 ID:Pk6xABjY0
しかしそんな生活も長くは続かなかった。

貯金は底が見えてきたし、青い社長を見る頻度も高くなってきた。

だが働く気はまったく起きなかった。
以下略



11:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 01:00:29.97 ID:Pk6xABjY0
その頃の俺は起きている間はずっと酔っ払っていたような気がする。
しらふだと視界の隅にぶら下がる何かが見えるから。

夢にも出てくるものだから睡眠時間も減っていって、それに逆らって酒の量は増えていった。



12:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 01:01:06.89 ID:Pk6xABjY0
金はどんどん減っていきそろそろ働かなければやばいそう思った。

だが頭ではそう思っていても行動に移せない。
仕事を探すような気力が俺にはもうなかった。

以下略



13:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 01:01:54.99 ID:Pk6xABjY0
ある晩、冷蔵庫を開けたら酒がなかった。
まだ寒い時期だったがしかたなくコンビニに行くことにした。
月の綺麗な夜で、ひんやりと澄んだ空気が心地よかった。

ふと気になって財布を開けるといくらかの小銭とカードしか入っていない。
以下略



14:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 01:03:00.12 ID:Pk6xABjY0
惨めな帰り道で閃いたことは目の間にある家に入ろう、ということだった。
電気のついていないその家は明るい月夜の中で逆に浮いていた。
家人は留守だろう、これならいけるだろう、そう思った。

俺はその家に入らなければいけない、そうすればなんとかなる、義務感のようなものに駆られていた。
以下略



15:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 01:03:37.48 ID:Pk6xABjY0
敷地に忍び込んで扉に手をかけるとすんなりと開いた。

鍵はかかっていなかったようだ。
息を殺して忍び込み中を探索する。
月の光のおかげで視界には困らなかった。
以下略



16:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 01:05:32.63 ID:Pk6xABjY0
シンクがある。キッチンだろう。
棚を開けると食器があったが割れていてどれも金にはなりそうもなかった。
下の棚を開けると包丁があったからそれを頂戴した。

今思えば実は心細かったのかもしれない。
以下略



17:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 01:06:46.76 ID:Pk6xABjY0
それを手にしたまま再び探索する。
次に和室に入った。
和室だと思ったのはフローリングだった床が畳になっていたからだ。



18:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 01:11:14.35 ID:Pk6xABjY0
目の端に何かが映る。
ひやりとはしたが俺は人だとは思わなかった。
ああ、また社長か、振り向けば消えてしまうのだろう、そう思った。

しかし目を向けた先には確かに人の形をしたものがいた。
以下略



19:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 01:11:57.87 ID:Pk6xABjY0
そいつの顔はあまりに青すぎた。青白いなんてものではない。
文字通り真っ青だった。
着物みたいなものを着てこっちを見ている。

俺はとうとう気が触れてしまったようだ。
以下略



20:名無しNIPPER[sage]
2015/02/12(木) 01:12:45.68 ID:Pk6xABjY0
その瞬間俺はなぜか怒りに燃えた。
散々つきまとってきた社長が−社長ではなかったかもしれないが
−目の前に出てきて俺に[ピーーー]という。
よりによって首吊りで、社長と同じ姿になれという。

以下略



21:名無しNIPPER[sage saga]
2015/02/12(木) 01:14:47.70 ID:Pk6xABjY0

俺は走ってその場から逃げた。
そいつの叫び声だけがいつまでも耳から離れなかった。

その晩は震えて眠ることすらできなかった。
以下略



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