10:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:31:07.91 ID:eYt1sT3M0
ドアをしめて、車の匂いにこもりました。私だけが使ってた車じゃなくて、346プロが女所帯だったからか、ほんのりと甘い香りがする。それがちょっとだけ息苦しいけど、不快ではありませんでした。
もう、半分の身体と出会えない。現実が体幹からバランス感覚を奪い、身体をクッションに押しつけさせました。手足は私のものじゃないみたいに震え、自分の体重で押さえ込むのでやっとになりました。
11:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:33:10.06 ID:eYt1sT3M0
<=//[:
「ついたぞ。収録、期待してる」
12:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:34:00.67 ID:eYt1sT3M0
「わからん話じゃないな」
Pさんはキーを引き抜き、降りる支度を始めました。私はその広い背中に、質問を投げかけました。
13:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:36:15.84 ID:eYt1sT3M0
無菌状態の真白の砂漠を、オーロラの万華鏡が照らす酷寒地獄を、大地を焦がす灼熱のサバンナを、猛烈な湿気と生命が息吹く密林を走るハイエースの姿が、脳裏に浮かびました。
誰の偏見にも苦しめられず、自らを必要としてくれる人に向けて、自分の力を証明し続けているはずです。使いつぶされることがマシンの本懐ならば、あの車はなにより幸せなハイエースかもしれません。
14:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:38:02.70 ID:eYt1sT3M0
きっと私は、ハイエースのような大人になりたいのかもしれない。私は、理想の自分を車に見ていたんです。
大きな陰がバックドアを開けて、私の前に入ってきました。
15:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:39:32.16 ID:eYt1sT3M0
「それを読み解くのだって、歌う側の仕事です」
胸を張って答えます。
16:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:40:40.93 ID:eYt1sT3M0
Pさんは口と手を並行して動かし、私の荷物を持っていこうとしました。でも、もう大丈夫だと断りました。らんど君の暑苦しい笑顔が、遠い所にいるハイエースが私に送ってくれた激励なんじゃないかって、想像出来たからです。勘違いや思いこみであろうと、絆の実感が活力を生んでくれました。
「心配させてすみません。先に行って下さい。締めておきますから」
17:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:41:23.71 ID:eYt1sT3M0
車をいったん降りて、それから運転席に座りました。目線がいつもより高くて、宙に浮いたような不安を感じたけれど、おぞましさよりも好奇心が強くなりました。
(私も運転してみたいな)
18:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:42:15.89 ID:eYt1sT3M0
「私だって負けません。私の名前は、私の名前です」
だから、見守っていて。その二の句は省略して、らんど君に笑顔を送りました。らんど君を真似た、出来るだけ暑苦しい笑顔です。サムズアップするらんど君の笑顔が逆光に照らされて、より輝いて映りました。
19:名無しNIPPER[sage]
2015/02/22(日) 07:44:27.83 ID:TBWlGZwRo
ええはなしだ
東南アジアじゃ宝石のような存在らしいね>ハイエース
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