86: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 04:54:29.04 ID:KlUD8s2/0
何十回と引き金を引いたあと、少ししてから空を飛ぶ悪魔たちが落ちていった。まだまだ空を飛ぶ悪魔は多い。空はほとんど追いかけてくる悪魔たちで占められている。しかしそれでも何匹かの悪魔は落ちていた。
京太郎の乱射が続いた後、空を飛ぶ悪魔たちからの攻撃が緩んだ。そうするとスポーツカーが一瞬、無重力状態になった。何が起きたのか把握できたのはディーだけだった。
87: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 04:57:24.06 ID:KlUD8s2/0
怪我を回復している虎城を確認して京太郎は助手席に戻った。
そしてあっという間に窓から体を乗り出し、はるか上空を睨みつけた。助手席に戻るときに、スポーツカーの中にある不思議な空間に放り出されていたデリンジャーを拾っている。
京太郎が動き始めたのは、不思議な気配を感じたからである。なんとなく何かが来ているような気がする。そんな不思議な気持ちに従って、京太郎は動いたのだった。
88: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:00:32.90 ID:KlUD8s2/0
暗闇の中を車は進んでいった。ヘッドライトが進行方向を照らしてはいた。しかし光が届かない部分が多すぎた。太陽の光が奈落の底まで届かないのだ。ランタンのひとつでもたっていればいいが、そういう類のものもない。完全に真っ暗闇。頼れるのはヘッドライトだけだった。
運転手のディーは困ったようにこういった。
89: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:03:39.15 ID:KlUD8s2/0
オロチの石碑の前に車を止めるとディーは運転席から降りて、石碑に近づいていった。非常に早足だった。そして石碑に手を触れこういった。
「オロチよ、マグネタイトを対価に支払う。どうか龍門渕までの道を教えてほしい」
これがオロチに道を教えてもらうための呪文なのだ。しかし呪文といってもこの通りに唱えなければならないわけではない。マグネタイトを支払うので、道を教えてほしいですとはっきりと伝えさえすれば、オロチは答えてくれる。
90: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:07:39.77 ID:KlUD8s2/0
京太郎がスポーツカーに戻ったとき、後部座席の不思議な空間で虎城が小さくなっていた。ひざを抱えて震えていたのだ。
助手席に座った京太郎が心配して虎城にきいた。
「大丈夫ですか? 顔色悪いっすよ」
91: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:11:56.36 ID:KlUD8s2/0
ディーは車をいったん止めて、こういった。
「怪しいな。いったいなんだ?」
明らかに怪しい女性から十五メートルほど離れたところにスポーツカーは止まった。ディーが車を止めたのは、怪しい女性が何かたくらんでいる雰囲気があったからだ。それこそ不用意に近づくとパクっとひとのみにされる雰囲気だった。
92: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:14:57.38 ID:KlUD8s2/0
次の道に続く坂道に向けて京太郎は歩いていった。不思議と京太郎は微笑を浮かべていた。恐れはもちろんある。襲い掛かられたとして対応できない可能性もあるのだ。
しかしそれを考えたとしても、目の前の奇妙な女性は魅力的だった。肌がぴりぴりするほどのマグネタイトの圧力。その密度。
「もしも戦いになったとしたらどうなるだろう」
93: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:18:24.25 ID:KlUD8s2/0
マグネタイトを吸い上げている怪しい女性にディーが攻撃を仕掛けようとした。怪しい女性の握手から一秒とたっていない。怪しい女性が京太郎に邪念を持ったのを戦闘開始のゴングと受け取ったのだ。
悪魔がマグネタイトを交渉の材料にすることはある。しかしそれ以上を求めようとするのは見逃せなかった。攻撃の態勢に入ったディーの手のひらに奇妙な力が集まり始めていた。小さな粒が次々と生まれ、太陽の周りを回る惑星のように動き始めている。
戦いが始まるかと思われたが、つかまれていない左手でディーにくるなと京太郎は合図を出した。自分の右手を握る女性の目を京太郎は見つめていたのだ。
94: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:22:25.77 ID:KlUD8s2/0
多少のトラブルはあったがディーの運転するスポーツカーはどんどん先に進んでいく。真っ暗闇だった空は気分のいい青空に変わり、土だけだった地面は草原と、人が歩いて作ったのだろう細い道に変わっている。
車が走るような舗装されている道ではない。しかしスポーツカーは先に進むのだった。何とか真っ暗闇の世界から抜け出すことができたけれども、まだまだ龍門渕に戻れるような状況ではないのだ。
安心したいのならば、蒸気機関が動き、空がさび付いている世界まであがる必要がある。さび付いた世界まで戻れば、後は力押しで戻っていけるだろう。
95: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:26:48.59 ID:KlUD8s2/0
完全に青ざめている虎城に一拍おいて京太郎がこたえた。
「一応サマナー扱いなんだと思いますよ」
虎城の質問の意味が京太郎はさっぱりわかっていなかった。京太郎は不思議そうにして、ディーのほうをちらりと見た。ディーが助けてくれないかなと期待したのだ。
96: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:32:15.99 ID:KlUD8s2/0
逆に呪術と呪物創作ではまったく京太郎は役に立たない。ウエストポーチの中に入っていた改造マッスルドリンコのような簡単な創作物でもアンヘルとソックの足手まといになる。それこそ手取り足取り、しっかりと手順を耳元でささやかれながら創作しても、失敗する可能性がある。
これは京太郎が馬鹿だからではなく、アンヘルとソックの「できて当たり前」が非常に高いところにあるからおきるのだ。歩き始めたばかりの赤ん坊に、オリンピック選手のような走りを要求するくらいには「当たり前」が離れたところにある。
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