5:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:28:09.03 ID:Gk/WojOoo
――――
そして、大好きだったピーターパンは、今は私のプロデューサーをしている。
ピーターパンだった頃の彼を正確に覚えている自信はないけど、
今のプロデューサーさんはあの頃と同じ少年のような顔つきへ、微かに青年らしさを滲ませている。
6:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:28:35.22 ID:Gk/WojOoo
着替えを済ませて事務所へ戻ると、二人のアイドルがプロデューサーさんを囲んでいた。
プロデューサーさんは集まる視線を手繰るように、手の上で平打ちの指輪を転がしている。
「いいかい、種も仕掛けもないよ」
7:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:29:01.12 ID:Gk/WojOoo
「じゃあ、これから不思議な魔法で指輪を探そう」
二人にせっつかれて、プロデューサーさんはまたウムムと唸り始めた。
8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:29:30.76 ID:Gk/WojOoo
「ここにあった」
手のひらの上に指輪がキラリと光っている。二人は再び沸き立った。
もう一回もう一回とせがむのをなだめて、プロデューサーさんは指輪を指へはめた。
9:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:29:56.28 ID:Gk/WojOoo
「ナナはとっくに準備していたんですけど」
「それならそうと言ってくれれば」
10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:30:28.13 ID:Gk/WojOoo
確かに、彼が仕事に対して真剣じゃないはずはない。それはよく分かってる。
余裕があるときはいつもレッスンを見てくれるし、
レッスンのあと「今日のナナはどうでした」なんて訊くと重箱の隅をつつくようにダメだったところを挙げていく。
事務仕事だって手伝っているようだし、自分でできることはなんでもやってしまう人。
11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:31:14.13 ID:Gk/WojOoo
「着きましたよ」
はっと目を上げると、オーディション会場のそばにある駐車場へ、車が立ち止まっていた。
私が助手席から降りても、彼はさも当然のようにハンドルを握ったままだった。
12:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:31:58.13 ID:Gk/WojOoo
――――
番号で呼ばれるのも慣れたものだ。
その時々違う番号で呼ばれて、はい、と元気よく返事。
13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:32:48.62 ID:Gk/WojOoo
「遅かったですね」
プロデューサーさんは私を見て、デスクから腰を上げようともしないまま言った。
14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:33:17.63 ID:Gk/WojOoo
「なにか言わないんですか」
「ええ。次、頑張りましょう」
15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:33:46.18 ID:Gk/WojOoo
高いところだから、風が強かった。馬鹿と煙は高いところが好きだと言う。
じゃあ、もっと高いところへ登ってやろうと、屋上の隅にあぐらをかいている貯水タンクのはしごに足をかけた。
その頂上へ立ったとき、ちょうどプロデューサーさんが屋上のドアを開けた。
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