過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
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157:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:22:51.41 ID:KP3+ivsDo
彼と過ごす時間が長くなるにつれ私の信念や思い、心は無自覚に彼に引かれ、惹かれていった。
それがいつからかと聞かれれば、最初からと答えるほかない。私は彼と出会ってから、そこから全てが始まったのだから。
彼との出会いが私に変化をもたらした。いや、回帰と呼ぶべきかもしれない。
158:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:24:14.83 ID:KP3+ivsDo
そうして迷い戸惑う私を先導するように歩く彼の姿は頼もしく、私が追うべき新たな光のようにも感じた。
だからこそ、そのあとの出来事に、彼のやったことに私の心は千々に乱れた。
彼と私が共有していると考えていた唯一のもの、それは共有などできていなかったと。
159:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:25:37.76 ID:KP3+ivsDo
彼の答えは変わらないというものだった。そのとき、深い失望が私を襲った。
だが、他人に勝手に期待して、勝手に裏切られたと感じた、その醜悪で手前勝手な私の思いが一番おぞましいものだとも思った。
そんな中、一色さんからの依頼が舞い込んだ。
160:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:27:54.37 ID:KP3+ivsDo
「えー、これ耐熱でもないから、熱くて持ちにくいし不便ですよぅ」
「一色さんも持ってきて構わないわよ。このあと比企谷君のも買いにいくことだし」
「え、そうなんですか?誰とです?雪ノ下先輩と二人で?」
161:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:29:56.77 ID:KP3+ivsDo
「歩くなよ、走れ走れ。ランニングコストな。まあ走るって意味でもねぇけど」
「んん?じゃあパパがYシャツの中に着てるやつ?ほらヒッキー、冷やすから手貸して」
「ん、あ?おお?」
162:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:33:45.88 ID:KP3+ivsDo
「え、ええ。別に構わないわよ」
ここまで話して一色さんだけ除け者というのも可哀想だ。彼女からそう言っているのに、断るわけにもいかないだろう。
「よかったー、ありがとうございます。じゃあ部活終わったらまた生徒会室来ますねー。あ、紅茶ご馳走さまでした」
163:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:35:15.51 ID:KP3+ivsDo
比企谷君の手を見ると、火傷をした指に由比ヶ浜さんのハンカチが巻かれていた。
女物のハンカチというのが不釣り合いではあるが、遠目に見れば包帯に見えなくもない。
「えー、そんな発明みたいに言われてもな。これいつ返せばいいんだ」
164:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:39:39.33 ID:KP3+ivsDo
なぜなら、彼と私は理解し合えているから。
一色さんの依頼はきっかけになると思った。
165:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:40:58.62 ID:KP3+ivsDo
てっきり生徒会長をやるものと思ったけど、結局人に押し付けるんだ。あなたはなにもやらなくていい、人が全てやってくれるもんね。
その言葉が挑発の類いのものであることは明白で、そのまま乗るのは癪ではあったが、それからもう一度よく考えることにした。
私が欲しいもの。目指すもの。姉が持っていないもの。彼も持っていないもの。
166:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:42:29.96 ID:KP3+ivsDo
私はこういった理由で生徒会長をやりたいのだとは言わず、やっても構わないと彼らに言った。
これで二人には伝わるはずだ。全てを言わなくても私たちは理解し合えるはずだ。
だが、比企谷君と由比ヶ浜さんは反対の意向を見せた。由比ヶ浜さんは奉仕部がなくなるのではないかと、そういった危惧をしているようだった。
167:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:44:06.02 ID:KP3+ivsDo
翌日、彼の口から告げられた提案に、私は安堵と驚嘆と愉悦がない交ぜになったような、言葉にし難い感情を覚えた。
そんな考えは私の頭になかった。だが、彼は私の考えを理解してくれたのだと思った。
彼は私が自分の意思で生徒会長になろうとしていたことをわかってくれた。
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