過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
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496:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 05:55:52.05 ID:bDJjjpJNo
「……そっか。うん、ありがと隼人くん。ちょっと元気、出たかも」
「そうか。それならよかった。じゃあ行こうか」
「うん」
497:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 05:58:14.25 ID:bDJjjpJNo
案自体は比企谷のものだが、実際に恐怖を味わわせたのは俺だから、俺から留美ちゃんに話しかけるのは躊躇われた。見かねた結衣が話しかけてくれてはいたが、成果は芳しくなかったようだ。
作業をする小学生たちから少し離れた場所で結衣と話す。
「あんなことをしたのに、あまり変わってないな」
498:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:01:42.96 ID:bDJjjpJNo
「…………うん」
結衣が頷くまでの少しの間は、留美ちゃんというより、話しかけにいく俺を気にかけていたからなのかもしれない。
留美ちゃんは長いソファーベンチの端にちょこんと座り、ハサミを器用に使って一人で星形の飾りを作っていた。そこへ向かい声を掛ける。
499:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:02:31.47 ID:bDJjjpJNo
「座らずに立ったままで話しかけるかな」
「…………なら、座れば?そこに立たれると邪魔」
「そうか、ありがとう」
500:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:03:15.11 ID:bDJjjpJNo
「そうか……。なら、意味はあったのかな」
「…………でも」
「でも?」
501:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:04:31.21 ID:bDJjjpJNo
「お節介か、そうだね。でも君のことを見てたらなんとなく、何かできないかと思ったんだ」
あんな悪役を引き受けても構わないと思ったのは、根はいい子達だと信じたかったからというのも確かにある。
だがそれよりも、知りたいことがあったから引き受けた。過去に俺がやった失敗は、違うやり方なら変えられることはできたのだろうか。あそこにいたのが俺ではなく、比企谷だったら何かを変えられたのか、それが知りたかった。
502:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:07:34.49 ID:bDJjjpJNo
「べ、別にいい。用なんかないから」
「そうか。じゃあ少し手伝うよ」
置いてあった箱に入っている紙とハサミを取ろうとすると、留美ちゃんはそれを拒絶するように箱を抱えて首を振った。
503:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:09:07.51 ID:bDJjjpJNo
もしそうであれば、やはり過去の俺はまちがっていたのだ。そして現在に至るまで、俺はまちがい続けている。
一人でやれると頑なに譲らない留美ちゃんを見ていると、俺の罪悪感の根元である忘れられない出来事が不意に甦った。その姿は、変わろうとし始めたあの頃の雪乃ちゃんと重なって見えた。
504:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:11:35.42 ID:bDJjjpJNo
雪乃ちゃんは昔はいつも自信がなさそうにしていた。どちらかでいうなら間違いなく引っ込み思案なほうで、お姉ちゃん、葉山くんといつも誰かについていくような子だった。
だが雪乃ちゃんは今と変わらず、その頃から図抜けて美しく、成績も優秀だった。そして俺も、自慢ではないがいつもクラスの中心で、女子からは羨望の目で見られていた。
この年頃の男子は好きな子に対し、ちょっかいを出すという行動でしか気が引けないものだ。
505:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:13:02.39 ID:bDJjjpJNo
彼女は責任を常に内に求め、他人を責めるということをしなかった。
理不尽な話ではあるが、彼女のその行動はあまり効果的ではなかった。度重なる嫌がらせに対して思ったような反応が返ってこないことを逆に疎ましく思われてしまい、やがて女子全員から無視されるという虐めの領域にまでエスカレートしていった。
俺はといえば、クラスの女子に声をかけそういったことは止めるようにやんわりと伝え、調和を取ろうとしていた。当然のように効果があったのは表面上だけで、裏では相変わらず嫌がらせが続いた。
506:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:14:01.74 ID:bDJjjpJNo
クラスでの味方は俺だけという状態が長く続いていたが、やがて女子の中から勇気のある子が一人、彼女に手を差し伸べた。
その子は雪乃ちゃんと俺の、大切な友達になった。
昔から一緒にいる俺以外の味方ができたことで、彼女は笑顔を徐々に取り戻していった。
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