過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
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507:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:15:30.69 ID:bDJjjpJNo
クラスの中心だった俺はその和を、今となって思えばそんなものを和と呼んでいいわけがないが、空気を壊すような行動がどうしてもできなかった。

クラス全体をバラバラにすることが怖くなり、何も犠牲にせずその子も彼女も守ろうとした。結局のところ、どちらかを選ぶ勇気が俺には足りなかったというだけのことだ。

そんな意味のないことを続けていた俺に対し、雪乃ちゃんの態度は変わり始めた。そしてある日、ついに選択を迫られることになる。
以下略



508:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:16:46.20 ID:bDJjjpJNo
友人への嫌がらせが止まない中、俺が雪乃ちゃんに話しかけてもつれない反応しか返ってこなくなった。

以前なら俺に頼ろうとしていたような場面でも、彼女は一人でやれる、助けはいらないと固辞するようになった。

二人の大切な友達が、雪乃ちゃんの変化の原因を、俺たちの険悪な雰囲気の原因を自分のせいだと感じていることにも気が付かず、俺たちは疎遠になっていった。
以下略



509:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:18:17.26 ID:bDJjjpJNo
いくら考えても、後悔しても、やり直したくても、時間は戻ってくれず、俺は救えなかった友達に謝ることすらもできなかった。

後に残されたのは、頼ることをやめ陽乃さんのような強さを求めるようになった雪乃ちゃんと、何も選べなくなった俺。以前のように仲良くはできなくなった二人だった。

雪乃ちゃんが変わろうとしてから、すぐに嫌がらせそのものがなくなった。彼女自身が変わることで問題は解消し、結局俺は最後まで何もできなかった。
以下略



510:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:19:10.49 ID:bDJjjpJNo


それから俺は、何も選ばず、他人からの期待に応えることだけを考えてここまで来た。

雪乃ちゃんとは疎遠になるとやがて雪ノ下さんに変わり、学校での会話がなくなるまでそう時間はかからなかった。
以下略



511:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:20:01.92 ID:bDJjjpJNo
奉仕部という部活には比企谷八幡という同じクラスだが馴染みのない男子もいて、彼女はその男子を気にかけているようだった。

その理由は林間学校でわかった。彼は躊躇いなく自分のことさえも投げ出せるうえ、既存の関係を壊すことのできる人間だったのだ。

仮に小学校が比企谷と同じだったとしても、俺は仲良くできなかっただろうと、彼にそう言ったことがある。それは本心だ。
以下略



512:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:21:30.21 ID:bDJjjpJNo
それよりももっと許せなかったのは、彼自身の自己評価が低いことだった。彼が価値のないものだと思っているとしたら、それに嫉妬している自分は一体なんなんだ。

だが俺は彼にはないものを多く持っているのも事実で、それを認めることができないほど子供ではない。彼は俺の対極にいる人間で、お互いができないことをできるという、たったそれだけのことなのだろう。

そうわかってはいても、一度内から這い出てきた醜い嫉妬心は、決して消えることはなかった。
以下略



513:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:23:15.40 ID:bDJjjpJNo
なんとか彼女の力になれないかと思いはしたが、さすがに生徒会長とサッカー部の部長と兼任は難しいと感じていた。

その後、陽乃さんと雪ノ下さんのやり取りがあり、彼女は自分が生徒会長になるから応援演説をしてほしいと頼みを変えてきた。わざわざ頼みたくもないであろう俺に頼むあたり、彼女の本気が伺えた。

陽乃さんの考えと違い、俺にはもう彼女が陽乃さんの影を追っているとは思えなかった。彼女は陽乃さんも持っていないものを求め、前に進もうとしているのだと思った。
以下略



514:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:24:29.38 ID:bDJjjpJNo
だから、これが彼女を近くで見られる最後の機会になるかもしれない。

だが応援演説を既に引き受けている手前、それも叶わないことだ。

そう思っていたのに、彼女から比企谷も生徒会に入ると聞いて、そう提案したのが彼自身だと聞いて考えを改めたくなった。
以下略



515:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:26:45.87 ID:bDJjjpJNo
そんなことを考えていると、どこから聞いたのか、陽乃さんは雪ノ下さんが生徒会長になろうとしていることを知って、本気ではなさそうに軽く俺に言った。

「ついでに隼人も入れば?生徒会長じゃなきゃ兼任でもなんとかなるでしょ。どうせ雪乃ちゃんじゃ上手くやれないだろうから、フォローしてあげれば?」

陽乃さんは別に俺に何かを期待してそう言ったわけではない。雪ノ下さんの状況を聞くのに、俺が近くに居たほうが都合が良いか、単純にそのほうが面白くなると思っただけだろう。
以下略



516:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:27:47.19 ID:bDJjjpJNo
それが葉山隼人らしくない行動であることはわかっていた。

故に、実際に何人かからはなんで生徒会に入ったのかと理由を尋ねられた。そのときは陽乃さんに言われたことを利用して、詳細をぼかして答えることにした。


以下略



517:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:28:23.46 ID:bDJjjpJNo
自分でそんな生き方を選んでおきながら、俺は誰かにまちがっていると言ってほしかった。

きっと、そうすることで俺は初めて、あの時から前に進むことができるのだろう。


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