過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
1- 20
498:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:01:42.96 ID:bDJjjpJNo
「…………うん」

結衣が頷くまでの少しの間は、留美ちゃんというより、話しかけにいく俺を気にかけていたからなのかもしれない。

留美ちゃんは長いソファーベンチの端にちょこんと座り、ハサミを器用に使って一人で星形の飾りを作っていた。そこへ向かい声を掛ける。
以下略



499:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:02:31.47 ID:bDJjjpJNo
「座らずに立ったままで話しかけるかな」

「…………なら、座れば?そこに立たれると邪魔」

「そうか、ありがとう」
以下略



500:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:03:15.11 ID:bDJjjpJNo
「そうか……。なら、意味はあったのかな」

「…………でも」

「でも?」
以下略



501:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:04:31.21 ID:bDJjjpJNo
「お節介か、そうだね。でも君のことを見てたらなんとなく、何かできないかと思ったんだ」

あんな悪役を引き受けても構わないと思ったのは、根はいい子達だと信じたかったからというのも確かにある。

だがそれよりも、知りたいことがあったから引き受けた。過去に俺がやった失敗は、違うやり方なら変えられることはできたのだろうか。あそこにいたのが俺ではなく、比企谷だったら何かを変えられたのか、それが知りたかった。
以下略



502:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:07:34.49 ID:bDJjjpJNo
「べ、別にいい。用なんかないから」

「そうか。じゃあ少し手伝うよ」

置いてあった箱に入っている紙とハサミを取ろうとすると、留美ちゃんはそれを拒絶するように箱を抱えて首を振った。
以下略



503:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:09:07.51 ID:bDJjjpJNo
もしそうであれば、やはり過去の俺はまちがっていたのだ。そして現在に至るまで、俺はまちがい続けている。

一人でやれると頑なに譲らない留美ちゃんを見ていると、俺の罪悪感の根元である忘れられない出来事が不意に甦った。その姿は、変わろうとし始めたあの頃の雪乃ちゃんと重なって見えた。


以下略



504:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:11:35.42 ID:bDJjjpJNo
雪乃ちゃんは昔はいつも自信がなさそうにしていた。どちらかでいうなら間違いなく引っ込み思案なほうで、お姉ちゃん、葉山くんといつも誰かについていくような子だった。

だが雪乃ちゃんは今と変わらず、その頃から図抜けて美しく、成績も優秀だった。そして俺も、自慢ではないがいつもクラスの中心で、女子からは羨望の目で見られていた。

この年頃の男子は好きな子に対し、ちょっかいを出すという行動でしか気が引けないものだ。
以下略



505:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:13:02.39 ID:bDJjjpJNo
彼女は責任を常に内に求め、他人を責めるということをしなかった。

理不尽な話ではあるが、彼女のその行動はあまり効果的ではなかった。度重なる嫌がらせに対して思ったような反応が返ってこないことを逆に疎ましく思われてしまい、やがて女子全員から無視されるという虐めの領域にまでエスカレートしていった。

俺はといえば、クラスの女子に声をかけそういったことは止めるようにやんわりと伝え、調和を取ろうとしていた。当然のように効果があったのは表面上だけで、裏では相変わらず嫌がらせが続いた。
以下略



506:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:14:01.74 ID:bDJjjpJNo
クラスでの味方は俺だけという状態が長く続いていたが、やがて女子の中から勇気のある子が一人、彼女に手を差し伸べた。

その子は雪乃ちゃんと俺の、大切な友達になった。

昔から一緒にいる俺以外の味方ができたことで、彼女は笑顔を徐々に取り戻していった。
以下略



507:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:15:30.69 ID:bDJjjpJNo
クラスの中心だった俺はその和を、今となって思えばそんなものを和と呼んでいいわけがないが、空気を壊すような行動がどうしてもできなかった。

クラス全体をバラバラにすることが怖くなり、何も犠牲にせずその子も彼女も守ろうとした。結局のところ、どちらかを選ぶ勇気が俺には足りなかったというだけのことだ。

そんな意味のないことを続けていた俺に対し、雪乃ちゃんの態度は変わり始めた。そしてある日、ついに選択を迫られることになる。
以下略



508:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:16:46.20 ID:bDJjjpJNo
友人への嫌がらせが止まない中、俺が雪乃ちゃんに話しかけてもつれない反応しか返ってこなくなった。

以前なら俺に頼ろうとしていたような場面でも、彼女は一人でやれる、助けはいらないと固辞するようになった。

二人の大切な友達が、雪乃ちゃんの変化の原因を、俺たちの険悪な雰囲気の原因を自分のせいだと感じていることにも気が付かず、俺たちは疎遠になっていった。
以下略



958Res/569.11 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice