過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
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504:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:11:35.42 ID:bDJjjpJNo
雪乃ちゃんは昔はいつも自信がなさそうにしていた。どちらかでいうなら間違いなく引っ込み思案なほうで、お姉ちゃん、葉山くんといつも誰かについていくような子だった。
だが雪乃ちゃんは今と変わらず、その頃から図抜けて美しく、成績も優秀だった。そして俺も、自慢ではないがいつもクラスの中心で、女子からは羨望の目で見られていた。
この年頃の男子は好きな子に対し、ちょっかいを出すという行動でしか気が引けないものだ。
505:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:13:02.39 ID:bDJjjpJNo
彼女は責任を常に内に求め、他人を責めるということをしなかった。
理不尽な話ではあるが、彼女のその行動はあまり効果的ではなかった。度重なる嫌がらせに対して思ったような反応が返ってこないことを逆に疎ましく思われてしまい、やがて女子全員から無視されるという虐めの領域にまでエスカレートしていった。
俺はといえば、クラスの女子に声をかけそういったことは止めるようにやんわりと伝え、調和を取ろうとしていた。当然のように効果があったのは表面上だけで、裏では相変わらず嫌がらせが続いた。
506:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:14:01.74 ID:bDJjjpJNo
クラスでの味方は俺だけという状態が長く続いていたが、やがて女子の中から勇気のある子が一人、彼女に手を差し伸べた。
その子は雪乃ちゃんと俺の、大切な友達になった。
昔から一緒にいる俺以外の味方ができたことで、彼女は笑顔を徐々に取り戻していった。
507:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:15:30.69 ID:bDJjjpJNo
クラスの中心だった俺はその和を、今となって思えばそんなものを和と呼んでいいわけがないが、空気を壊すような行動がどうしてもできなかった。
クラス全体をバラバラにすることが怖くなり、何も犠牲にせずその子も彼女も守ろうとした。結局のところ、どちらかを選ぶ勇気が俺には足りなかったというだけのことだ。
そんな意味のないことを続けていた俺に対し、雪乃ちゃんの態度は変わり始めた。そしてある日、ついに選択を迫られることになる。
508:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:16:46.20 ID:bDJjjpJNo
友人への嫌がらせが止まない中、俺が雪乃ちゃんに話しかけてもつれない反応しか返ってこなくなった。
以前なら俺に頼ろうとしていたような場面でも、彼女は一人でやれる、助けはいらないと固辞するようになった。
二人の大切な友達が、雪乃ちゃんの変化の原因を、俺たちの険悪な雰囲気の原因を自分のせいだと感じていることにも気が付かず、俺たちは疎遠になっていった。
509:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:18:17.26 ID:bDJjjpJNo
いくら考えても、後悔しても、やり直したくても、時間は戻ってくれず、俺は救えなかった友達に謝ることすらもできなかった。
後に残されたのは、頼ることをやめ陽乃さんのような強さを求めるようになった雪乃ちゃんと、何も選べなくなった俺。以前のように仲良くはできなくなった二人だった。
雪乃ちゃんが変わろうとしてから、すぐに嫌がらせそのものがなくなった。彼女自身が変わることで問題は解消し、結局俺は最後まで何もできなかった。
510:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:19:10.49 ID:bDJjjpJNo
それから俺は、何も選ばず、他人からの期待に応えることだけを考えてここまで来た。
雪乃ちゃんとは疎遠になるとやがて雪ノ下さんに変わり、学校での会話がなくなるまでそう時間はかからなかった。
511:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:20:01.92 ID:bDJjjpJNo
奉仕部という部活には比企谷八幡という同じクラスだが馴染みのない男子もいて、彼女はその男子を気にかけているようだった。
その理由は林間学校でわかった。彼は躊躇いなく自分のことさえも投げ出せるうえ、既存の関係を壊すことのできる人間だったのだ。
仮に小学校が比企谷と同じだったとしても、俺は仲良くできなかっただろうと、彼にそう言ったことがある。それは本心だ。
512:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:21:30.21 ID:bDJjjpJNo
それよりももっと許せなかったのは、彼自身の自己評価が低いことだった。彼が価値のないものだと思っているとしたら、それに嫉妬している自分は一体なんなんだ。
だが俺は彼にはないものを多く持っているのも事実で、それを認めることができないほど子供ではない。彼は俺の対極にいる人間で、お互いができないことをできるという、たったそれだけのことなのだろう。
そうわかってはいても、一度内から這い出てきた醜い嫉妬心は、決して消えることはなかった。
513:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/17(月) 06:23:15.40 ID:bDJjjpJNo
なんとか彼女の力になれないかと思いはしたが、さすがに生徒会長とサッカー部の部長と兼任は難しいと感じていた。
その後、陽乃さんと雪ノ下さんのやり取りがあり、彼女は自分が生徒会長になるから応援演説をしてほしいと頼みを変えてきた。わざわざ頼みたくもないであろう俺に頼むあたり、彼女の本気が伺えた。
陽乃さんの考えと違い、俺にはもう彼女が陽乃さんの影を追っているとは思えなかった。彼女は陽乃さんも持っていないものを求め、前に進もうとしているのだと思った。
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