過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
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735:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:12:27.90 ID:vhSqVbECo
「……ゆきのん」
「起きてたのか」
「二人の声で目が覚めたのよ。由比ヶ浜さん、私は……」
736:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:13:33.54 ID:vhSqVbECo
二人だけで完結しそうな会話に慌てて割り込む。
「なんでって、これからも三人でいられたらいいなって思うの、変かな」
「違う、そうじゃない。それは俺も同じだ」
737:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:14:46.23 ID:vhSqVbECo
雪ノ下は俯きがちになりながら訥々と語る。
「理由とか理屈とか建前とか、そんなものどうだっていい。ただ、私は純粋に……この居場所を失くしたくない。絶対に」
姿勢を正した拍子に由比ヶ浜が肩に掛けたブランケットが床に落ちた。雪ノ下はそれを拾うことなく抱えた思いを吐露し続ける。
738:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:15:42.49 ID:vhSqVbECo
俺は何を言うべきなのかわからなくなった。どこまでもすれ違うことに呆れ果て、全身から力が抜けそうになった。
今の雪ノ下が少し前の俺で、今の俺が少し前の雪ノ下だ。
二人のやり取りを見るに、現在の由比ヶ浜と雪ノ下は同じことを考えているようだ。
739:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:17:10.14 ID:vhSqVbECo
「俺は……お前らからしたらすげぇ勝手で、酷い奴なんだと思う。ただの俺の自己満足なのかもしれねぇけど、それでも言葉にしたい。そうするって決めたんだ」
こういうことを話すときはどんな顔をすればいいのだろうか。相応しい表情があるのかは知らないが、俺が今どういう顔をしているかは容易に想像できる。
きっと、我慢しようとしているのに我慢しきれず駄々をこねる、泣き出しそうなみっともない顔だ。
740:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:18:52.84 ID:vhSqVbECo
こんなところで泣くのは甘えだ。自分でそうすると決めたのだから、俺が泣く理由なんかどこにもないし、これ以上無様で惨めったらしい姿をこいつらに見せたくない。
「どれだけ言葉を尽くしても誤解されるかもしれないし、言いたいことの半分も伝わらないかもしれない。話せばわかるなんて、俺の傲慢な思い上がりに過ぎねぇのかもしれない」
これまで俺も、雪ノ下も、由比ヶ浜でさえも決定的な言葉を避けに避けてここまできた。その中でも数えきれないほどに、俺の身には余るほどの幸せな時間を過ごしてきた。
741:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:20:18.41 ID:vhSqVbECo
「私がさっき言ったお願いは、叶えてもらえないのね……」
雪ノ下が少しだけ恨みが込もったような眼差しを向ける。
「……すまん、それはできない。俺は馬鹿だから、お前らに何を言われてもその裏を疑っちまうんだ。結局お前らのことを信頼してないのかもしれない。これは俺の本音だ。けど、こんなろくでもない奴なのに、そんなこと考えてるのに、それなのに……」
742:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:22:10.80 ID:vhSqVbECo
「そのためにはこのままじゃきっと駄目なんだ。見ない振りを続けてこのままでいられたら確かに楽しい。俺は今の居場所もこの関係も大好きで、失いたくない。けどそれでも、馬鹿みたいな理想を追いかけて全部を失うとしても、それでも……」
曖昧で自分でもよくわからないものを言葉にしてしまってもいいのかと躊躇いがあった。
でも今はそれしか出てこない。どうしても脳裏から離れない、平塚先生に言われた言葉。俺が昔から求めていた抽象的な言葉。
743:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:24:01.88 ID:vhSqVbECo
こんなねだるような戯言じゃなくて、もっとスマートに、理路整然と話せたらよかったのに。
でも、俺が考えてもがき苦しんで、足掻いて悩んだ結果だ。受け入れろ。
雪ノ下と由比ヶ浜は少し驚いた顔で、そんな妄言を吐く俺を見つめていた。
744:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:24:43.92 ID:vhSqVbECo
「行こうか」
「……はい」
葉山先輩の空気を吐くだけの声に促されて、生徒会室の扉を開けることなく静かにその場を離れた。
745:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:25:49.10 ID:vhSqVbECo
わたしがいくら叩いても全く響かず、びくともしない葉山先輩の作る壁は、少しでも揺れ動いたりしたんだろうか。
「少し話そうか。どこか別のところへ行こう」
葉山先輩は普段と変わらない調子でそう話し、わたしは大人しく頷く。
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