過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
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885:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:43:16.79 ID:kAKMmD4ho
目だけを向けて表情を見たが、その言葉の意味するところはわからなかった。
「比企谷、ケーキ作りを見てきたらどうだ?俺はさっき見てきたけど頑張ってるよ、二人とも」
「……そうね、少し見てあげるといいんじゃないかしら」
886:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:44:24.86 ID:kAKMmD4ho
知ることは怖いが、知らないでいることはもっと怖い。知らなくていいことが世の中にたくさんあるのもわかっている。それでもなお、気にならないと言えば嘘になる。
だが二人には二人の関係がある。
これは雪ノ下と葉山だけじゃなくて、葉山と一色、俺と由比ヶ浜、由比ヶ浜と雪ノ下。五人がそれぞれに別々の、独自の関係を持っている。そして俺が全てを知ることは決してできない。
887:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:45:09.54 ID:kAKMmD4ho
それはきっと、これからわかる。
一一一
888:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:46:18.96 ID:kAKMmD4ho
雪ノ下の声に反応して窓の外へ目を向けると、ちらほらと白い結晶が花弁のように舞っていた。
「珍しいわね、千葉に雪が降るなんて」
「そういえば天気予報で降るかもって言ってたね」
889:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:47:29.80 ID:kAKMmD4ho
「……二人にも教えてやるか」
そう言い残し、葉山はキッチンのほうへ移動していった。残された俺と雪ノ下の間に沈黙が降りる。
「……バルコニーに出ていいか?」
890:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:48:33.38 ID:kAKMmD4ho
「おぉー、雪だー」
「さ、寒い……」
雪ノ下は肩を震わせながら、寒風に煽られて暴れまわる黒髪を手で懸命に押さえ込もうとしていた。
891:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:49:34.82 ID:kAKMmD4ho
「どうかしら……。明日には晴れるらしいから、積もるまではいかないんじゃない?」
千葉に雪が降ること自体珍しい。積もるとなれば尚更だ。それに今は、全く根拠のない願望に近い予想ではあるが、そうはならない気がした。
すべてを覆い隠してしまう雪はもう、積もらない。
892:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:50:33.56 ID:kAKMmD4ho
吹き付ける風は依然止まず、いくら身を寄せ合っていても寒いものは寒い。にも関わらず、俺たちは無言で雲が吐き出す息の残滓を眺め続けた。
あと何度、彼女達とこんな景色を見られるのだろうか。
いや、ここにある全ては今しか見られないのだ。俺たちはいつだって後戻りのできない今を過ごしている。
893:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:51:44.22 ID:kAKMmD4ho
だよな。こんな状況でそんなこと、言えないよな。自嘲と自虐で自己弁護するのはみっともねぇから、もうやめだ。
「……わかってるよ。俺はもう、ぼっちとは言わない。俺には……お前らがいるから」
それ以外の全てを壊してでも、大切にしたい人がいるから。
894:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:52:36.29 ID:kAKMmD4ho
「だな、戻るか。風邪引きそうだ」
「うん……」
寒さに負けてバルコニーから戻ると、部屋が温室のように感じられた。じわじわと沁みるように暖かさが浸透し、体が徐々にほぐれてくる。
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