過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
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894:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:52:36.29 ID:kAKMmD4ho
「だな、戻るか。風邪引きそうだ」
「うん……」
寒さに負けてバルコニーから戻ると、部屋が温室のように感じられた。じわじわと沁みるように暖かさが浸透し、体が徐々にほぐれてくる。
895:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:53:34.16 ID:kAKMmD4ho
たいしたものじゃないが、何がいいかわからず考え抜いた残留思念のようなものは宿っているはずだ。いやなんかキモいなこの言い方だと。
二人ともなんのことかわからない様子で呆けていたが、はっと気づくと確認するように聞いてきた。
「これ……クリスマスプレゼント?」
896:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:54:15.97 ID:kAKMmD4ho
「そう……。気にしなくてもよかったのに」
「ヒッキー……。開けてもいい……のかな?」
「お、おお……。ほんとたいしたもんじゃねぇけど……」
897:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:55:15.78 ID:kAKMmD4ho
だが、俺は彼女達にはこれが似合うのではと考え、当人の色の好みと違っていたとしても、それでも構わないと結論付けた。それだけ…………じゃないよな。
自分でも薄々わかっている。根底にあるのはおそらく、ただの独占欲。彼女達のことは俺が一番わかっていると、そう思い込みたかった。
だがこれを赤裸々に語るには時期尚早な気がする。というか言っても大丈夫なことなのかよくわからない。
898:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:55:56.41 ID:kAKMmD4ho
「ん、まぁ……そうだな」
俺が言おうとしたことそのまんまだったので少し驚いてしまった。伝えようとしたのは、ちゃんと自分で考えた、というその一点だったからこれでいいはずだ。
「そう……」
899:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:56:41.86 ID:kAKMmD4ho
「今髪に付けるといきなりでちょっと目立つから、ここで……」
「あはは……そうだね」
二人はシュシュを腕につけ、よく見えるよう胸の高さまで上げて見せた。袖口で青とピンクの花が揺れている。
900:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:57:36.58 ID:kAKMmD4ho
鍋とチキンによる和洋折衷の騒がしい夕食も終わり、食後に出てきたケーキもありがたく平らげることができた。
ブッシュ・ド・ノエル。
901:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:59:14.85 ID:kAKMmD4ho
俺はこれからも、俺の意思や意図と無関係に関わる人間を傷つけてしまうのだろう。
その傷を見て、俺も後悔と痛みに苛まれるのだろう。でももう、そんなに苦しいなら最初から関わらなければよかったなんて思わない。そう決めている。
その後全員で食事と部屋の後片付けを終えると、帰るにはほどよい時刻となり、最後に来年もよろしくといった趣旨の挨拶を互いに交わして解散となった。
902:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:00:17.52 ID:kAKMmD4ho
雪ノ下の見送りは固辞し、四人でマンションのエントランスまで降りてきた。雪はまだ積もってはいないが、夜になっても降り続けていた。
「ヒッキー、楽しかったね」
駅に向かい、並んで歩くのは由比ヶ浜。前方には少し離れて葉山と一色がいる。
903:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:01:52.87 ID:kAKMmD4ho
長い睫毛に雪がかかる。
掲げた手には、青い花。
開かれていた掌が閉じ、きゅっと握られる。
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