過去ログ - 紬「カチューシャ、前髪を上げて。」
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38:けいおんSS[sage saga]
2015/07/01(水) 22:38:01.80 ID:CuC+Dd1t0
悪戯めいて笑う。
わたしはムギに背を向けて歩き出した。
「プール?そっちじゃないよ?」
39:けいおんSS[sage saga]
2015/07/01(水) 22:38:33.00 ID:CuC+Dd1t0
潤んだ瞳がきゅっと細くなった。
「……一生会えなくなるわけじゃない」
40:けいおんSS[sage saga]
2015/07/01(水) 22:39:47.08 ID:CuC+Dd1t0
◆ ◆ ◆
今まで何度だって、外に出ようとしたことはあったんだ。
けど、ごうごうと風にあおられた扉を見るたび、こりゃ外に出られそうにないな、と諦めた。
それが今日はどうだろう。
41:けいおんSS[sage saga]
2015/07/01(水) 22:40:31.32 ID:CuC+Dd1t0
「ねぇ。覚えてる?」
42:けいおんSS[sage saga]
2015/07/01(水) 22:41:15.22 ID:CuC+Dd1t0
◆ ◆ ◆
降り続ける雨がより一層勢いを増して、まるで世界を洗い流すようなスコールになった。
豪雨に押しつぶされてしまないよう、必死に傘の柄の部分を両手でギュっと掴んで、重さに耐える。
43:けいおんSS[sage saga]
2015/07/01(水) 22:42:05.76 ID:CuC+Dd1t0
「ねぇ覚えてる?
はじめてふたりで水族館に行った日のこと」
44:けいおんSS[sage saga]
2015/07/01(水) 22:42:45.99 ID:CuC+Dd1t0
泡が。
どこからともなく生まれては弾け、細かくなって浮かんでは消えた。
「あれ見て。あの魚」
45:けいおんSS[sage saga]
2015/07/01(水) 22:43:30.71 ID:CuC+Dd1t0
◆ ◆ ◆
また霧が立ち込めてきて、彼女は赤い傘を広げた。わたしもそれに続く。
真っ白い霧はだんだんと濁ってゆき、あたりを暗闇が包み始める。
鮮やかな赤は真っ暗な空間にぽっかりと浮かび上がりながら進んでいく。
46:けいおんSS[sage saga]
2015/07/01(水) 22:44:28.46 ID:CuC+Dd1t0
「ねぇ覚えてる?
夏休みの宿題で星座の観察したときのこと。あの日も星がきれいだったね。
それで”ちょっとでも空に近いところのほうが、きっともっと星がきれい見えるよ”って、
47:けいおんSS[sage saga]
2015/07/01(水) 22:45:29.64 ID:CuC+Dd1t0
”さそり座”なんて言っても本物のさそりが空の上にいるわけじゃない。
ただ空の上でバラバラに散らばっているようにしか見えない星と星を結びつけて、それを”⚪︎⚪︎座”って名前をつけてしまうなんて、昔の人の想像力ってすごいなと思う。
48:けいおんSS[sage saga]
2015/07/01(水) 22:46:44.98 ID:CuC+Dd1t0
「花火、また二人で見に行きたいね」
……また?
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