172:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/13(月) 22:59:28.57 ID:mAIq3Puio
それから、色々な人が、色々な花を入れていった。
たちまち棺は彩りに満ちて。
顔だけを残して、美樹さやかは花の布団に包まれていた。
173:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/13(月) 23:00:20.63 ID:mAIq3Puio
「……バカ野郎」
そんな声が、近くから聞こえた。
佐倉杏子が、声を押し殺して涙を堪えていた。
174:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/13(月) 23:01:04.95 ID:mAIq3Puio
「……はい」
横から、何かが声と一緒に差し出された。
それは新品らしいハンカチだった。
175:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/13(月) 23:03:26.53 ID:mAIq3Puio
式を終わって、主をなくしたその場を離れて。
どこへ行くでもなく外で黄昏れていた私に、佐倉杏子が言った。
「火葬場ってさ。
176:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/13(月) 23:04:10.29 ID:mAIq3Puio
◆
177:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/13(月) 23:04:58.16 ID:mAIq3Puio
それは煙を吐き出してはいなかった。
もう終わってしまったのか、それともまだ中に居るのか。
外からではそれを窺い知ることはできなかった。
178:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/13(月) 23:05:52.60 ID:mAIq3Puio
私は、ついさっきまでの告別式を思い出していた。
それは誰のためのもので、何のためのものだったのか。
今なら何となく、分かる気がした。
179:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/13(月) 23:06:35.82 ID:mAIq3Puio
だけど死んでしまった人はもう何もできないから。
残された人たちが、自分たちの意志でその心に刻み込む。
忘れないようにと。
その人から受け取ったものを、それぞれの中で生かしておけるようにと。
180:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/13(月) 23:07:36.11 ID:mAIq3Puio
「……煙」
巴マミの声が、小さく聞こえた。
微かに黒煙が、立ち上っていた。
181:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/13(月) 23:08:38.33 ID:mAIq3Puio
◆
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