93:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 23:29:34.70 ID:PVCiXxqLo
だんだん。だんだん。
まるで見えない手が外から窓を叩いているようだった。
どんどん。どんどん。
弾けた赤黒い雨粒は窓の上に広がって、妙な図形を作って消える。
94:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 23:30:34.72 ID:PVCiXxqLo
だんだんだんだんだん。
どんどんどんどんどん。
95:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 23:31:46.00 ID:PVCiXxqLo
引き戸の向こう側。
何も考えずにそこをくぐった私は、自分の目を疑った。
「……病、院?」
96:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 23:33:06.59 ID:PVCiXxqLo
少し、温度が低いようだった。
ようやく落ち着いた頭に浮かんだのは、そんなことだった。
ひんやりとした空気を背筋に感じて、私は思わず身体を震わせる。
97:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 23:33:57.03 ID:PVCiXxqLo
風の存在について、考えられることは二つ。
どこかの通用口が外に通じているか。
もしくは、誰かがどこかで派手に暴れているか。
空気が掻き回される理由は、それしかない。
98:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 23:35:36.11 ID:PVCiXxqLo
カツ。
泥も落ち、雨も乾いたのだろうか。
足を踏み出すと同時に、いやに鮮やかな音があたりに響いた。
99:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 23:37:12.10 ID:PVCiXxqLo
コツン、コツンと、一段ずつ。
私は階段を下りていた。
風の流れは、下からだった。
100:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 23:38:11.28 ID:PVCiXxqLo
階段を降り切った。
半開きのドアの向こうは、もう地階だ。
取っ手は妙に温かかった。
101:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 23:39:05.31 ID:PVCiXxqLo
ふら、と、足元が揺れた。
視界が斜めに傾いで、そのまま落ちていく。
その隅っこに、なんとか、その声の主を捉える事が出来た。
102:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 23:40:08.18 ID:PVCiXxqLo
心臓が止まりかねないくらいには驚いた。
ただでさえ異常に薄気味の悪いこの空間で、神経を張り詰めさせた状態で。
風船に針を指すような一声を浴びたのだから、たまったものではない。
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