過去ログ - 渋谷凛「私は――負けたくない」
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168: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:23:34.67 ID:s8phhYh5O
経済の疲弊、覇権主義を隠そうともしない隣国、自然災害、対応が極めてお粗末な内閣と後手々々に回る政府――

巷のあらゆる人間にとって、先行きの全く見えない時代に突入していた。

もうまもなく年度が変わり、新しい一年が始まろうかという平日の午後。
以下略



169: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:24:18.40 ID:s8phhYh5O

カラン、と音がして店の扉が開いた。

ここは銀座の本通りから一本裏路地に入ったところ。

以下略



170: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:24:47.27 ID:s8phhYh5O
扉を開けて入って来たのは、初老の男だった。

常連と云えるほど通っているわけではないので、見知らぬ顔だったとしても驚かない。

しかしその態は真っ黒と云う些か奇妙なもので、それを半ば不躾な視線で凝視する若い男に、初老の男が気付く。
以下略



171: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:25:16.60 ID:s8phhYh5O


――

「……アイドルプロダクション、ですか」
以下略



172: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:25:54.14 ID:s8phhYh5O
名刺を眺めつつ問う若い男に、初老の男は大きく頷いた。

「そうだ、君……いや失礼。えー、あなたを見て――」

「Pです、私の名は」
以下略



173: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:26:31.56 ID:s8phhYh5O
「――でね、今さっきPさんを見て、ティンときたので、是非我が社にお誘いしたいのです」

机の上に指を組んで、初老の男が笑った。

Pは貰った名刺に再び視線を落とし、訝しむ様子で問う。
以下略



174: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:27:06.47 ID:s8phhYh5O
そもそもプロデューサーと云うものは、制作の現場やマネージメント、ディレクション等を経て到達する地位だ。

制作だけでなく、“製作”、つまりライン全体を管理し、労使の橋渡しもする、実務側に於いては最高位。

齢二十三の人間にとって雲の上の存在と云える。
以下略



175: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:27:33.63 ID:s8phhYh5O
Pの表情からその疑問を察するかのように、

「我が社は設立したてでしてな、まだスタッフが社長の私と事務兼アシスタントの二人しかおりません――」

と、自らを社長と称する初老の男は言葉を添えた。
以下略



176: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:28:07.44 ID:s8phhYh5O
ゆっくりと呑んで、芳醇な味わいを楽しんでから、

「私が社長兼プロデューサーとして動くことも可能です。しかし、いつかは世代交代が到来するのは必定。
 それに半身として二人三脚で動くなら、アイドルと歳が近い方が何かとやりやすいことも多い」

以下略



177: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:28:38.55 ID:s8phhYh5O
CGプロと云う名は、広告代理店、つまり芸能と縁の深い業種にいる彼でさえ聞いたことがないのだ。

勿論、それは設立したてなら仕方ないことであろうが、そもそも目の前の男が何者なのか。

出会ったばかりの男の云う会社が本当にアイドルプロダクションとしてやっていけるのか。
以下略



178: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:29:07.55 ID:s8phhYh5O
そしてもう一口、今度は先程よりも多めにコーヒーを呑んでから。

「――私が青木麗のプロデュースをしていた、と申せば幾分かは判って頂けますかな?」

「青木……麗……!?」
以下略



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