285: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 03:59:52.09 ID:s8phhYh5O
「……もう終わったんだ?」
てっきり、詫びの行脚や埋め合わせの会議などで、もっと時間がかかるものだと思っていたからだ。
「勝手知ったるマイホーム……だったところだからな」
286: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:00:33.26 ID:s8phhYh5O
「ねえ、プロデューサー。えっと……怒らないの?」
「馬鹿云え。これは俺の判断ミスが原因だ。適材を適所に配置できなかった俺の責任だ」
こめかみを掻いて、「先輩にこっぴどく絞られた」と、ばつの悪い顔をする。
287: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:01:02.03 ID:s8phhYh5O
綿密な戦略が必要なのだと、Pは思い知らされた。
「それに、下手をすれば……急くあまり、お前の心を折ることになってしまうかも知れなかった」
すまないことをした、とPは目を伏せ、凛に詫びた。
288: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:09:37.09 ID:s8phhYh5O
・・・・・・
289: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:10:04.87 ID:s8phhYh5O
凛は鞄を一度置いて、形の良い人差し指を顎に添えながら思案に耽る。
「んー、最初さ、麗さんに見てもらったとき、存在を表現することが気に入ったんだよね」
アイドルの世界に踏み込もうと決心した、あの日のことだ。
290: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:10:32.72 ID:s8phhYh5O
その言葉を手帖に書き留め、
「なるほどな。それじゃあ、ステージに立つ方向で試しにやってみようか」
Pは、パタンと閉じてから、視線を向けて問うた。
291: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:11:01.70 ID:s8phhYh5O
そこへPは、一日かけて取りまとめた始末書を提出しに寄った。
失態を詫びるPに、社長は殊更追及することなく、静かに首肯するのみだった。
それは、Pが問題点を把握し改善の方向性を既に見出していることが、二人の様子から汲み取れたからだ。
292: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:11:32.09 ID:s8phhYh5O
いつものレッスンスタジオ、その防音扉を、Pは静かに開けて中へ入った。
凛の邪魔をしないよう、レッスン場の隣の部屋から、彼女を様子を見る。
293: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:12:02.06 ID:s8phhYh5O
凛は、同年代の女の子と比べて、かなり長身の部類に入る。
加えて、整った造形といい、芯のある声質といい、これなら相当にステージ映えするはずだ。
Pは、無理に笑顔を作らせるより、ビジュアルとパフォーマンスを絡めて展開した方がいいと確信に至った。
294: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:12:46.74 ID:s8phhYh5O
ここまでくれば、あとはどうやってステージデビューさせるかを考えれば良い。
光明は、徐々に徐々に、見えてきている。
ただし、デビューの方策こそが一番の難題でもあった。
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