32: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:51:07.86 ID:9XUzSbFIo
  
 「なら慰める必要もないんだね。それは安心した」 
 「ちょっとは慰めてよ」 
 「どっちよ」 
 「あ、でも同情はしないで」 
33: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:51:52.62 ID:9XUzSbFIo
  
  子供の世話は忙しかったようだ。 
  モモが網戸の前にいても半月ほどは姿を現さなかった。 
  
 「疲れた……」 
34: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:53:16.73 ID:9XUzSbFIo
  
 「……でもかわいいんだあ」 
  
  ぐちぐちと苦労話を続けた後、猫が顔をほころばせた。 
  
35: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:53:43.82 ID:9XUzSbFIo
  
  一か月も経つと子猫はさらに元気らしい。 
  
 「生意気に狩りの真似事なんかしちゃってさ」 
  
36: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:54:26.81 ID:9XUzSbFIo
  
 「え?」 
  
  モモが声を上げると、猫はどこか遠くを見ながらつぶやいた。 
  
37: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:55:13.72 ID:9XUzSbFIo
  
  こちらに背を向けて猫は寝そべった。 
  見えなくなった顔が、どんな表情を浮かべているかはもちろんわからなかったけれど。 
  まあでも言えることはあった。 
  
38: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:55:40.99 ID:9XUzSbFIo
  
  猫は背を向けたまま黙っていた。 
  ただ尻尾だけが時折ゆるりと揺れた。 
  
 「帰る」 
39: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:56:19.43 ID:9XUzSbFIo
  
  どういう意味かは分からなかった。 
  多分だけれど、猫自身もきっとわかってはいなかったのだとモモは思う。 
  ただ、少し考えてから答えた。 
  
40: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:56:53.02 ID:9XUzSbFIo
  
  その日以来、猫は姿を見せなくなった。 
  
41: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:57:24.74 ID:9XUzSbFIo
 つづく 
42: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:40:53.20 ID:9XUzSbFIo
  
  モモは網戸の外をのぞいた。 
  今日も猫は来ていない。 
  どんなに尾羽を梳いてみても、どんなに翼を整えてみても、猫はやって来なかった。 
  
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